ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

「きょうされん」の全国大会

弁護士 尾藤 廣喜






 どんなに障害が重くても働きたい。しかし、障害の程度にあった職場がない。そんな思いを持った当事者や家族が、誰でも働ける場所を自分たちで作ろうとして始まったのが「共同作業所」です。共同作業所は、1963年3月、名古屋での知的障害者施設で初めて開設されましたが、それ以来、精神障害者をはじめあらゆる障害者(作業所では、仲間と言っています)の間にこの運動が広がり、現在、全国で共同作業所の理念を受け継ぐ作業所(団体)は、1万6000あると言われています。

 共同作業所の全国的な集まりである「きょうされん」の全国大会は、今年9月21日、22日に京都で開かれます(京都国際会議場が会場)。京都では、4度目の開催になります。

 今年は、日本が「障害者権利条約」を批准してから5周年の節目の年です。しかし、まだまだその理念や具体的な内容が全国に根付いておりません。そこで、全国大会の記念企画は、国連障害者権利条約特別委員会の元議長として条約の原案をまとめられたドン・マッケイ氏とマリア・ソリダード国連障害者権利委員会元委員長を招いての公開国際シンポジウムを企画しています。

 一方、神奈川県の重度障害者施設での殺傷事件に象徴されるように、この国には、「生産性が高いかどうかによって人間の価値が決められる」という見方がいまだ根強い実態があります。今、大きな問題となっている「強制不妊手術」の問題もこの考え方による旧優生保護法に基づいて行われたものです。そこで、大会では、障害があるかどうかに関わりなく誰もが等しく生きられる社会をどう実現していくかを議論し、実行していくかをともに考えます。せっかく京都に集まるのですから、「狂言」の鑑賞や着物の着付け体験などの楽しい企画も考えています。

 「ともに生きる ともに創る 夢ある未来へ 京都から」の大会スローガンのもと、未来へのメッセージを発信する希望ある集会にしたいと思っています。



びとう・ひろき氏 1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。