ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

若者に未来を

弁護士 尾藤 廣喜






 日弁連の人権擁護大会が、4、5日に青森市で開催された。私は第3分科会「日本の社会保障の崩壊と再生」の実行委員の一員として参加した。

 分科会では「日本社会の課題にどう立ち向かうか」との本田由紀東京大学大学院教授の基調講演、日弁連からのテーマに関する基調報告とイギリス、スウェーデンでの調査報告がなされ、その後、「若者未来サミットin青森」が開かれ、スウェーデンから来た19歳と17歳の若者と青森、東京、静岡の若者との対話・交流がなされた。また、井手英策慶応義塾大学教授、後藤道夫都留文科大学名誉教授、諏訪原健元SEALDsメンバーと本田教授でパネルディスカッションも行われた。

 ディスカッションの内容も充実していたが、注目されたのは、むしろ「若者未来サミット」。

 日本の若者が、高校3年で人生の選択を迫られ、しかも、失敗が許されない生きづらさを訴えたのに対し、スウェーデンの若者は、高校卒業後働いて経験をつんでから自分の生きたい方向を選び、進路を決定することは珍しくない、そして、それは決して不利にはならないと発言。また、日本のブラックバイトの実態報告もあり、スウェーデンを訪問した大学生からは、「社会が生きている感じがした。日本では社会が死んでいる」「若者を信じてもっと任せてほしい」との発言もあった。税金についても、「決して高くない。社会から得られるものが多くあり、税金が減れば福祉が小さくなる」というスウェーデンの若者に対し、「税金でサポートされた実感がないのに、大人になって突然納税義務があるといわれても納得できない」との日本の若者の発言が対照的だった。

 しかし、両国の違いを強調し、ただ嘆くだけでは創造的ではない。スウェーデンの若者から、「みんなは、レールを離れても頑張っている勇気のある人だと思う。あきらめずに続けていこう」とのエールが送られ、会場全体で「若者の力」を確認し、サミットが閉じられたのが救いだった。



びとう・ひろき氏 1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。