ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

こころの元気

僧侶・歌手 柱本めぐみ




 「じゃあ、また今度ね」そう言いながら笑顔でお帰りになる皆さんを見送るのは、私にとってうれしい時間のひとつです。

 私の寺では、月に2〜3回集まって歌を歌っています。平均年齢は70歳近いのですが、寒い日でも皆さんが足を運んで下さって、合わさる歌声にパワーをいただいています。

 歌うのは主に日本の叙情歌や、懐かしいフォークソングなど。たまに「新曲」に挑戦したりもしますが、うまく歌うのが目的ではなく、楽しく歌うことを基本にしていますから、少々間違っても、音が外れたりしてもご愛嬌(あいきょう)。それもまた楽しいのです。そして、そのあとのお茶の時間がこれまた賑(にぎ)やかです。いろいろな話に花が咲き、笑い声に満ちる温かなひとときです。

 人が元気で暮らすために、声を出すということはとても大切なことだと私は思っています。まず、呼吸を意識することができ、これによって身体があたたまります。次に、声帯を動かす筋肉がきたえられます。このことは誤嚥(ごえん)の防止、また全身の老化防止にも役立つと聞きます。そして何よりも、人が生きていくために不可欠な、こころの元気につながると思うのです。

 「おはよう」「こんにちは」というあいさつを交わし、おしゃべりできる相手があるということは、人と人の和という観点から鑑みても生きる元気の源ですし、さらに歌えば表情もこころも明るくなります。歌の会にご参加の方の中には「ここで思いっきり歌うとスッとします」と言われる方もおられますからストレス解消にも役立つのかもしれません。

 大声で人を応援することで自分を鼓舞することができると、プロの応援団を立ち上げた方があるそうです。やはり声を出すことは、こころのエネルギーになるということでしょう。

 普段から声を出すことが少ないと思われる方は、歌でも歌うか、詩吟でも吟じるか、あるいは人に会って話す機会を作っていただきたいものです。こころの元気、明日の元気のために。



はしらもと・めぐみ氏
京都市生まれ。京都市立芸術大卒。歌手名、藤田めぐみ。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンなど、幅広いジャンルでのライブ、ディナーショーなどのコンサートを展開。また、施設などを訪問して唱歌の心を伝える活動も続けている。同時に浄土真宗本願寺派の住職として寺の法務を執り行っている。