ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

災害リスクに立ち向かう学びあえる関係性

関西大教授 所 めぐみ


 昨年は関西でも大阪北部地震、大型の台風と災害が続いた。災害への対応や備えについて、自分たちに何が必要なのか。地域福祉活動の実践から互いに学びあうセミナーを開催した。

 地震直後に地域活動をするか否かの判断とその調整に苦労したことをきっかけに「マニュアルを作ろう」との声が上がり、簡単な災害時のマニュアルを作成した地域の報告。3カ月にわたるそのプロセスのなかで校区福祉委員会としての意識が高まり、より一層「安全・安心」の言葉の重みを感じることができたとのことであった。

 見守り・訪問・サロン活動等を通じて積み重ねてきた「日頃からのお付き合いの大切さを改めて感じた」という声は、見守りや訪問の「対象」となっている住民からも支援者となっている住民からも出された言葉である。普段声かけをしている障がいのあるお子さんのいる家族の方たちに、地震で扉が開かなくなった状況から助けてもらったという福祉委員の役員さん。「平時」には支援者であっても被災すれば助けが必要となる。助け助けあえる関係性により救われた。

 校区福祉委員会が高齢者自身による活動(シニアクラブ)の組織化を進めていた地域では、このシニアたちが、お互いに安否を確認しあいまた地域福祉活動の活動者とつながっていたことで、校区全体のつながりが広がっており、迅速に安全を確認し合えた。

 災害をめぐる経験や知恵、思いを将来にいかせるよう共有できるかどうか。「日常」を捉え直すきっかけや手がかりにできるかどうか。こうすれば絶対大丈夫という保証はない。しかし誰か任せにしてはおけない。自分の命、普段の暮らしの安全・安心を守りたい。必要な情報を与えられるのではなく、協同して問題解決にあたる力をつけられるか。地域福祉活動は、こうした力を獲得する日常的に学びあえる関係性をつくりだしている。



ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。