ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

こころの和

僧侶・歌手 柱本めぐみ




 「青い地球は誰のもの」という歌をご存じでしょうか。1970年、ちょうど大阪万博の年から5年間放映された「70年代われらの世界」という、社会問題を提起するドキュメンタリー番組のテーマソングでした。その歌が強く印象に残っていましたので、『緑の大地・世界の平和』をテーマに開いた15日の「父の日チャリティーコンサート」のプログラムに入れました。この歌の歌詞は、タイトルの「青い地球は誰のもの」を何度もくり返すだけなのですが、このフレーズを歌っていますと、私たち人間のエゴのために失ってきたものを考えずにはいられませんでした。

 言うまでもなく、地球は誰のものでもありません。しかし、さも自分たちのものであるかのように錯覚してきた人間の営みによって、地球上の森林は加速度的に失われています。さまざまな生物のいのちが脅かされ、気象変動にも影響を及ぼすことも明らかになっています。当然、人間の生活にも変化が生じてきているわけですが、たまたま読んだ本の中に「自然の崩壊は人間の活力を奪い、人の和を乱す」という一文を見つけた時、緑の大地を守るために最も大切なものは、私たちのこころにあるのではないかと思ったのです。

 人間は生活の豊かさを求めてきました。少し豊かになれば自分はもっと豊かになりたいと思い始め、己の欲望を満たすために和合のこころを無くし、その結果のひとつが地球を傷つけることにつながったと言えるのではないでしょうか。

 今回のチャリティーコンサートでは、「青い地球は誰のもの」を京都市少年合唱団の皆さまと歌わせていただきました。そこにはお互いの声を聴いて響きあう声の和があり、調和があり、こころの和がありました。子どもさんの澄んだ声につつまれて歌いながら、若い人たちの長い将来のために、私たちがこころの和をつないで、みんなで地球を守っていく必要性を強く感じました。それは、争いのない平和な未来にもつながると思います。



はしらもと・めぐみ氏
京都市生まれ。京都市立芸術大卒。歌手名、藤田めぐみ。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンなど、幅広いジャンルでのライブ、ディナーショーなどのコンサートを展開。また、施設などを訪問して唱歌の心を伝える活動も続けている。同時に浄土真宗本願寺派の住職として寺の法務を執り行っている。