ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

ビューティフル・ネーム

関西大教授 所 めぐみ


 ゴダイゴのビューティフル・ネーム。1979年の「国際児童年」の協賛歌だった。40年前、子どもの時にはわからなかったけれど、あらためていい歌だなと思う。

 以前にも書いたが、毎年ゼミで和歌山県のある地域にフィールドワークにでかけている。小学6年の子どもたちが地域の民生委員や自治会役員の方々といっしょに地域の高齢者のお宅を訪問して、困っていることや、いっしょにやりたいということをきいて子どもたちなりにできることを実現している。はじめての訪問の日はまだ緊張して用意した質問しかできない子どもたちが、次回の訪問時には、「楽しかった!」と声をそろえる。学生さんたちは同行して、その後子どもたち自身による振り返り(話し合い)や、同行した大人たちによる振り返りにも入っている。

 今年ははじめて学生一人一人が(私も!)子どもたちからお手紙をもらった。「先生、私お手紙もらっちゃいました!」と中国からの留学生。うれしそうなのは彼女だけではない。そして今、子どもたち一人一人の名前を書いて学生たちはお返事を書いている。一人一人の顔を思い出しながら、一つ一つの言葉を選んで。自分の名前で呼ばれるという、この当たり前とも思えることが、どれだけ元気や力をくれるか、逆に呼ばれないことでがっかりさせるか。

 かなり前のことだが別の仕事をしながら非常勤講師として社会福祉士実習を終えた学生さんたちの演習を担当した時のこと。今でも忘れられないのは、ある学生さんの高齢者施設での実習の経験。彼女は職員さんから一度も名前で呼んでもらっていなかった。いつも「実習生さん」と呼ばれていた。彼女にとってそれは心にひっかかる経験であった。彼女の気持ちをクラスでわかちあった後、どうしていきたいかを考えた。私たちは一人一人の名前で呼ぶことを大切にしようと。ゴダイゴの歌とともにときどき思い出している。



ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。