ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

学際性と専門性

関西大教授 所 めぐみ


 短い滞在であったが英国で開催された二つの会議に連続して参加した。一つは民間非営利セクターやボランティアなどを研究する学会で、もう一つは社会的ケアと住宅政策についての日英共同研究のシンポジウムとワークショップであった。

 いずれの会議にも見られたのは、研究発表後の質疑応答にとどまらず、参加者同士がディスカッションできる場がきっちりと設けられていることである。全体会では、どうしても質疑応答で終わりがちなため、グループに分かれてテーマや課題についてワークショップをして議論を深める。そしていずれも非常に学際的で、多様な専門領域の研究者や行政や民間機関の実践者が参加していることである。比較の視点を持つことで、国の違いを超えてみえる共通課題や異なる課題、それぞれの背景などについてあらためて関心が喚起された。英国側の人類学の研究者による日本の高齢者、特に過去に罪を犯した高齢者たちの困難な生活状況と生きるさま、そして支援のあり様を丹念なフィールドワークにより明らかにするアプローチについても刺激を受けた。

 もう一つの特徴は、若い研究者の参加を大事にしている点である。若い研究者を研究プロジェクトに入れるのは、英国でも日本でも研究助成金を得る上での条件になってきているが、特に国際共同研究の場合は、若手が経験を積めるようにすることはもちろんであるが、国際的な共同研究の基盤を持続的につくっていくことへの投資でもある。

 日本では、地域包括ケアなど医療、福祉、住宅などの連携が政策的課題となっている。そのためのハード面ソフト面の連携を進める上で、行政など専門機関や専門職間はもちろん、住民との連携・協働も課題となっている。そうした異なる主体の協働を進めるためには、研究・実践ともに学際性が求められると思うが、学際的アプローチで発揮できる自分の専門性を磨くことの必要性をあらためて感じている。



ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。