京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●コラム「暖流」
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 社会保障制度のこれから弁護士 尾藤 廣喜 10月1日から、消費税が8%から10%に増税された。増税の理由は税収の安定と社会保障の財源対策にあるとされているが、果たして現実はそうだろうか。安定した税収をと言いながら、防衛費は無際限に増額され、大企業ほど法人税の実質税率が低くなるという税制の不公平はあいかわらず是正されないままとなっている。 そして、消費税は、低所得者ほど負担が重く、法律上は目的税とされていても、会計上は一般財源とされ、どのような使い道にも使うことができるという根本的な欠陥がある。 加えて、社会保障の充実の目玉とされた幼児教育・保育の無償化についてすらも、最も深刻な待機児童問題は未解決のままで、対象施設が限定され、給食費が無償でなく、保育士など職員の待遇が改善されておらず、人手不足が依然深刻であるなど問題が山積されたままである。 このような問題だらけの消費税増税の中で、今度は、全世代型社会保障検討会議が設置され、既に初会合が9月20日に開かれている。ところが、その議論の方向は、年金の支給開始年齢の繰り延べ、年金額の減額、医療保険の自己負担分の強化、介護サービスの利用者負担割合の増加、介護保険給付からの除外の拡大など、社会保障制度を軒並み後退する方向が予定されており、一体何のための消費税増税だったのかと言いたい。 しかも、会議のメンバーは、総理、関係閣僚のほか財界関係者、学識経験者などで構成され、高齢者、若者、一人親家庭、障害者など当事者の代表も医療や介護の関係者も労働組合の代表も全く参加していない。したがって、本当の意味で「全世代」のさまざまな立場の意見が反映されるかどうかも疑問だ。 私たちは、主権者として、消費税増税が必要だったのかどうか、そして、社会保障制度のこれからについて、もっともっと積極的に意見をあげていかなければならない。 びとう・ひろき氏 1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。
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