ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

人間らしい生き方

真宗大谷派僧侶  川村 妙慶



婚活に「AI(人工知能)マッチング」を利用する方が増えているそうです。結婚を希望する人の趣味、経歴、顔の好み、年収を登録するとあらゆるデータをAIが分析して、マッチング率の良い相手を見つけるというのです。

今までのお見合いは、周りの人たちが少しのおせっかい役もかってお世話をしていくというイメージでしたが、人のお世話に「煩わしさを感じる」という人も増えたのと、コロナ禍になかなか出会いがないというのも理由なのですね。たしかに、希望する異性をコンピューターに探してもらうというのも合理的でしょう。

しかし、婚活は人探しだけではありません。出会いをご縁に、共同生活する中で関係性を育てていくことで人間関係に深みが出てくるのです。これからの時代、AIの助けも必要でしょう。しかしすべてを効率化ではかっていくと、「われ先に」という競争思考型に走り「格差社会」を生んでしまいます。勝ち負けや優劣の観念が強くなると、人間存在そのものまでも格付けされるようになります。

親鸞聖人は、能力だけの関係ではなく、尊いいのちをいただくもの同士が励まし合い、支え合う世界が開かれていくことで本当の幸せが見つけられることを願われたのです。それが「とも同朋(どうぼう)」(親鸞聖人御消息)という言葉で表しています。ある方は、「AIには内臓がない」とおっしゃいました。「腸(はらわた)が煮えくり返る」、「断腸の思い(腸がちぎれるくらい耐えがたいほどの悲しみ)」など、腸と心はつながっていることを先人は教えてくれました。

つまり臓器は、ただの器ではなく、生命エネルギーの器なのです。また臓器が不調を訴えることで身体の声を聞き、自我の思い、知能だけでは生きていけないことも教えてもらうのです。

さて、臓器の中でも心の器だけはレントゲンに映りません。心は、人間同志が慈しみ労わりあうなかで育てられるものなのです。人間らしい生き方とは、さまざまな関係性(縁)の中で育てられていくのですね。



かわむら みょうけい氏
アナウンサー。メールで悩み相談受け付け。北九州市出身。