ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

障害者の就労を支援
自立促進へ実績は着々と

 

日置 貞義(ひおき さだよし)さん



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事務所でさまざまな関連データをパソコンでまとめる日置さん
 近鉄大久保駅前(宇治市)から、歩いて数分。障害者就業・生活支援センター はぴねす=TEL0774(41)2661=のオフィスがある。今月初めセンター長に就任したばかりの日置貞義さんは30歳と若い。電話、パソコンを自在に使い、きびきびと動く。利用者や市役所、福祉施設などとの連絡、問い合わせに次々に対応する。多岐な用件は「障害者が働き、自立する」、その一点に集約されている。

 京都労働局の委託による就業・生活支援センターは、京都府では7年前に京都市に第1号が開設され、6年前のはぴねすは第2号で、今月、新設の宮津市をしんがりに、本年度から全域をカバーする体制が整った。全国では昨年度で265カ所ある。

 「障害者の就職あっせんは一般の人と同様にハローワークでしかできません。しかし、ハローワークへ行けば、すべて解決というわけにはいきません。その前に、就業の相談から、必要なら基礎訓練や就労実習、また土台となる生活相談、さらに就労後の定着まで、いくつもの課題があります。そこで就職あっせんを除きその最初から最後までセンターがかかわり、支援しています」

 現在のスタッフはセンター長を含め4人。それぞれ内外で動き回り、事務所に全員がそろうことがまれなほど多忙という。

 担当地域は八幡、京田辺、宇治、城陽の4市と宇治田原、井手、久御山の3町に及ぶ。

 「設立当初、センターが丘陵地にあって、アクセスが不便だったのですが、3年前に便利なここに引っ越しました。それで登録者が年々増え、今は491人。昨年度の相談件数が2800件にのぼり、現在の就労実習が延べ54件です。相談と実習を経て就職につながったのが、この6年間で計188件で、年間では3年前の56件が最高です」

 実績は着々と積まれている。これを全国で見ると、就職件数は平成17年度、2万6446人から20年度、4万4463人へ。3年で68%増えた。新規就職申し込みが同7万6432人から11万9765人へ急増。とくに精神障害者の専門・技術職への就職が増えている(厚生労働省調べ)。

 「障害者への支援とともに事業主の方に向け実習の受け入れ、雇用、また雇用定着などの面で、必要な助言、現場でのジョブコーチなど当事者間をコーディネートしています。どちらかの肩を持つのではなく、中立の立場を守ります。以前と比べ厳しい一面も否めませんが、本当に働ける人は働いていく方がいいでしょう。私たちは障害者の、働きたい、働き続けたいという、気持を大切にしています」

 2年前から、地域の保健所、企業、病院、福祉施設など12の関係機関が連携するサポートチーム調整会議が設置され、緊密に協力しあうため協議を続けている。徐々に実質的協力が始まり、近未来のモデルとして期待される地域支援ネットが動きだしている。

 「一つの事例を報告する度に、さまざまな問題が見えてきます。それを福祉の面からだけでは解決できなくとも、地域の社会資源がかかわりあい、一緒に考え、解決できるように、今後とも支援を続けたいです」