ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

ユーモアの心を忘れずに
発達障害者の就労支援

 

高松 光照(たかまつ こうしょう)さん



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グループホームのキーパーさんとの関係者会議で話す高松光照さん
 滋賀県北部、JR米原駅に近いビルの一角に、県発達障害者支援センターいぶき=TEL0749(52)3974、FAX(52)3984=がオフィスを設けている。その就労支援担当、高松光照さん(42)は、県内全域をカバーし、文字通り東奔西走の日々。障害者や家族からの相談を手始めとして就労から日常生活、余暇に至るまで、支援の継続が求められている。支援全体の中核に位置する同センターの一員として、高松さんは、自らの直接的なかかわりとともに地域での支援ネットワークと連携し、生涯サポートへ、取り組んでいる。

 「18歳以降、青年成人期の人たちからの相談が、5年前に比べて急増しています。昨年度が実相談人数が約700人、延べ3400件です。とくに知的障害を伴わない人と、いまだ診断が出ていない人が多くなっています。現在、相談を希望されても、しばらく待機していただかざるをえないほどなんです」と高松さんは、話しだした。

 8年前、「自閉症・発達障害者支援センター」として発足。全国でも一早く、この分野に専門的に取り組んでいる。5年前に発達障害者支援法の施行を受けて改称。高松さんは7年前から、センターに勤務している。

 「面談のあと、検査、就労相談、企業での環境設定への助言と続きます。この間、当事者、家族に出会い、その状態を直接、見聞きします。一人一人の特性は、結局、違っていますので、それぞれの支援の仕方について私は答えを持ち合わせていません。つまり、当事者、現場にしか答えは見いだせないんです。以前の経験に基づいてあるパターンを適用したら、解決できるという訳にはいかないんです。何年やっても、毎回、自問と反省が尽きません」

 就労のほか高松さんは、普及・啓発の仕事も手がけている。支援にかかわる地域の民生委員、学校の先生、福祉作業所の指導員、企業の現場の同僚などへ、この障害の特性について説明し、同時に関係者と一緒に考え、具体的な対応策を見いだせるよう努めている。

 また、当事者が生活し、仕事をしている地域ごとの支援ネットワークの協議にも加わり、連携を調整している。さらに毎週水曜日は、3年目に入った「キーパーソン養成事業」の講師を務めてもいる。この制度は、県内の各福祉圏域に支援事業を推進するため、鍵となる人材を育成するもので、「発達障害者支援コーディネーター」が計10人、すでに育っている。

 「就労支援という肩書なんですが、就労相談は入り口にすぎないですね。そこに入ると、一人一人の生活、余暇など他の課題が連なって見えてきます。この障害の特性から、どの人にも、生涯に渡る一貫した支援が必要です。現場にいますと、とにかくも本人に会って話を聞かないことには、どうにもなりません。そうした結果、仕事を就労だけと限定できず、おのずと動きが増えていきます。実情は、成人支援という方に近いですね」と打ち明ける。そして「時には難しく、困ってしまうことも再三なのですが、それでもユーモアの心を忘れずにやって行けたらと思っています」と前向きに結んだ。