ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

心の病 経験もとに居場所を
新作業所の開設を準備

 

宮田 直孝さん(みやた なおたか)さん



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既存のものとは違った作業所の開設構想を語る宮田さん(ひと・まち交流館 京都で)
 心の病を持つ人のための新しい作業所の開設を―と、京都市中京区在住のパートタイマー、宮田直孝さん(44)が準備会を作り、呼びかけている。先月、最初の準備会を開いたが、しっかりした協力者はまだ現れず、来月にも第2回の準備会を予定している。心の病に悩んだ人が自らの経験を生かして、既存の作業所とは違った、のびのびと自由にくつろげる居場所を作りたい、と新構想を掲げている。

 京都市下京区の「ひと・まち交流館 京都」で開いた第1回の準備会。「事前に電話での問い合わせもありましたが、参加は5人でした。こちらから説明した作業所建設の趣旨には賛同してもらいました。話し合いでは、もっと手近な目標を立てた方が良いとか、障害を持つ子どもの親として関心がある、などと意見がまちまちに出て、まとまりに欠けました」

 宮田さんの前半生は、多難な曲折に満ちている。高校生の時、不登校になり、翌年に精神病院へ入院し、高校は中退した。19歳で定時制高校に入り直して23歳で卒業。その後、精神障害者支援施設や企業で働き、30歳で大学に入り、バイトをしながら社会福祉学部で学んだ。この間、宮田さんは、いじめにもあい、対人恐怖の経験まであり、小学生以来、なかなか友だちを作れず、20歳にして、やっと1人の友だちができたという。「大学在学中には、不登校やひきこもりの人たちが交流する当事者組織を結成して、会員は全国で多いときで60人に上り、会報の発行や交流ハイキングなどを催しました。その後、パートタイマーなどで働きながらも、ひきこもりの子や親たちを支援する活動を続けており、昨年から若い時からの念願である、新作業所の開設をめざす会を立ちあげたんです」

 新作業所の構想について「これまでに京都をはじめ、あちこちの作業所を見てきました。いずれも健常者のケースワーカーなどにより運営されていました。一方、新たな作業所では、いじめや不登校、心の病から立ち直ってきた経験をもとにして、利用者の気持ちにもっと寄り添い、理解できるように努め、のびのびとなんでも話せる楽しい居場所を目標にしているんです」

 「そんなフリースペースを立ち上げるには、一人では到底できません。あるいは自分の考えの不足するところや間違ったところでも、互いに話し合える、そんな協力者を求めています。もちろん、目標の実現には資金や施設確保、さらには関連法律の問題まで数多くのハードルがあることは分かっています。でも、その前に、協力者、賛同者を得なければ、なにも始まらないんです」

 「当初はアパートの一室や空き家を借りて始めるとしても、それなりに資金が必要です。当初は身銭を切ってでもと、心に決めています。なんとか、分かって、力を合わせてくれる人が現れたら」と、今後の進展に夢を賭けている。

 連絡先は宮田直孝さんの携帯電話 080 (4234) 8940 (午後5時〜同9時のみ)。