ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

社会の一員として尊重を
障害者と介助者を橋渡し

 

小泉浩子(こいずみ・ひろこ)さん



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職場でパソコンに向かう小泉浩子さん(日本自立生活センター自立支援事業所)
 主に重度の障害がある人を対象に、介助者の派遣事業を行っているNPO法人日本自立生活センター自立支援事業所=京都市南区東九条松田町62、TEL075(682)7950=の所長が小泉浩子さん(47)。開所した2003年から務める。

 小泉さんは脳性まひによる障害がある。福井県の高校を卒業後、京都市内で就職し、自立生活を始めた。銀行の事務などの仕事をしていたが、健常者中心の社会で常に疎外感を感じていた。障害者自立支援にかかわることになって、「自分が障害者だからこそ分かることがあると思う。今は主体的に仕事ができます」と言う。

 事業所は24時間、365日稼動。介助スタッフは常勤や登録など合わせ約150人いる。脳性まひ、筋ジストロフィーなど重度身体障害の人を主に、知的障害の人たちら計約140人の派遣利用者に対応している。

 小泉さんは利用者、介助者すべての面談・面接をする。介助者の面接では、言語障害がある小泉さんに接する態度で、向き不向きがストレートに伝わってくる。「資格ばかりが重視されますが、障害者の生活に寄り添って働ける人かどうかを大切にしたいです」

 障害者と介助者をつなぐ仕事を始めて、分かったことがあるという。「障害者側から見れば、健常者は100%なんでもできる人、と思うわけですが、『24時間いつでも働けます』と言う介助スタッフも、病気になれば動けないし、女性は子どもが生まれると自由が利かない。健常者も障害者と同『人』なんですね。介助者には、障害者の言う通りに働いてと言ってますが、長時間ずっと一緒で介助を続けていると、心身の疲れに耐えられないこともある。障害者自身もそのへんを分かってないとあかんと思うようになりました」

 介助スタッフの顔を見たら声をかける。働き過ぎではないか、悩みはないか・・・「いつもと違って目をそらすとか、口数が少ないとか、微妙な変化を見逃さず、話を聞きます」

 介助の基本として「介助している相手が話し終わるまで待ち、よく聞くこと」を挙げる。自立した人として、その人の意思を尊重することが第一だからだ。外出介助などの場面で、例えば店に入ると本人を無視して介助者に用向きを尋ねる店員がいる。「そんな場合、介助者が出すぎないよう、当人である障害者のすべてを分かったかのように答えないように、と言ってます。介助者は、店員が本人に向かって話すように仕向け、障害者も社会の一員だと伝えることが大事なんです」

 最近は知的障害の人の利用が増えている。介助の心構えを「想像力を働かせ、その人が考えるためのサポートを」とするが、「難しいこともあります。社会から疎外されている点で同じだと思うのですが、言い切る自信はなく、迷うところはありますね」。

「私が10代、20代のころは、皆が好奇の目で見る街中に出るのがいやでした。今は多くの障害者が外に出て行くし、健常者も若い人ほど障害者への抵抗がなくなってきている。社会環境は良くなってきたと思いますが、その分、依然としてある差別が見えにくくなったように思う。そこが気がかりです」