ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

障害者就労支援軌道に
誰もが地域で働けるよう

 

中塚 祐起(なかつか ゆうき)さん



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新緑に包まれて作業する人たちを、自身も清掃道具を手にして見守る中塚さん(大津市園城寺町、三井寺境内)
 滋賀県社会就労事業振興センター=草津市大路2丁目11の15、TEL 077(566)8266=の職員、中塚祐起さん(27)のコーディネートした事業が軌道に乗り始めた。障害者就労支援事業所(作業所)の連携を図り、障害がある人の働く場を広げる「地域協働事業場」の仕事だ。

 2011年の秋、中塚さんは大津市にある名刹(めいさつ)、三井寺に出向き、境内の清掃を作業所利用者に任せてもらえないかと相談。試しにと、3カ月間の委託が決まり、10月から大津市内の5カ所の作業所が共同で請け負うことになった。

 仕事は週3日、参道の落ち葉掃きやお堂周辺の清掃整備をする。中塚さんが月単位で作業所間の調整をし、作業日に必要な人数が確保できるシフトを組む。携わるのは知的障害や精神障害のある18歳から60代の約40人。作業所からは職員が同行するが、中塚さんも毎回現場で見守り、必要があれば作業も手伝う。

 「最初は委託する側も作業所側も不安があったでしょうが、作業する人たちの頑張りで信頼関係が築けた」と中塚さん。今年1月から1年契約になった。

 事業に加わる「社会就労センターこだま」は利用者のうち13人が三井寺の仕事を担当するが、日によって体調などで作業できる人が限られる。担当職員は「うちだけだと対応できない仕事だが、よそと協力し分担するので負担なく続けられる。作業中に観光客から声を掛けられることもあり、利用者は楽しいようです」と言う。

 中塚さんは、京都の大学で臨床心理学を学んだ後、作業所と企業をつなぐ事業を起こしたことがある。「障害がある人は福祉サービスを利用し福祉的就労を続けるだけで自立に結び付くのだろうか。労働に見合った賃金が支払われる仕事をする人が増えれば新たな就労のあり方が見えてくるのでは、と思ったのです」。しかし仕事は探し出せても、作業所に受け入れる余力のない現実があったという。

 そんな時、センターの考え方に出合う。障害がある人の就労支援をしつつ、福祉と経済の統合で地域の課題解決に努め、大きな枠組みで就労弱者のいない社会を目指そうという姿勢だ。中塚さんは昨年6月に職員となり、初仕事が「地域協働事業場」だった。

 「働くということを作業所内だけの事にせず、一般的な就労に近づけたい。作業所の職員不足や作業時間の規制など課題は多いが、方法はあります」

 社会へのアプローチとしては、引きこもりなどで無就業の若者に就業体験の場を提供する。三井寺の清掃作業にこれまで10人の若者が体験参加した。地域で就労弱者を支えるには地元経済の振興も重要な要素と、仕掛けもする。

 「三井寺地域に観光客が多く訪れ地元が活性化すれば、地域に力が付き、ひいては事業の安定につながる。春に事業の一環で、高齢者福祉施設に声を掛けて三井寺花見ツアーを企画しました。作業所の人たちが、お年寄りの休憩場所を設け、地元の菓子を使って茶の接待もした。お寺はにぎわい事業も収益が出た。紅葉の時期にも広げたい」と構想を膨らます。

 今後の課題は、センターの手を離れ作業所だけで事業運営ができること。理想は「いつの日か僕らが必要とされなくなり、障害があるなしにかかわらず誰もがプライドを持って地域で働ける社会」だと言う。