ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

かかわることから広がる
障害児の活動を支援

 

橋本 伸子(はしもと のぶこ)さん



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9月1日の集い会場で受け付けをする橋本さん。この日の内容は、発行する「つなサポ通信」やブログで伝えていく(舞鶴市伊佐津、西駅交流センターホール)
 舞鶴市内の障害児の親たちがつくる五つの団体と有志が、2010年4月に「つなサポ運営委員会」(林和代代表)=事務局携帯電話090(8794)9869=を発足させた。橋本伸子さん(45)はその一つの団体の代表で呼びかけ人。運営委では事務局長を務める。

 「それぞれの活動とは別に、共通して必要なことや一緒にできるイベントに取り組もうと始めました。まとまれば大きな催しができますし、障害がある子どもたちや家族の事を地域の人に知ってもらう機会は広がります」

 橋本さんは自閉症の息子(19)がいる。「2歳で分かった当時、本屋さんに行っても自閉症に関する本はなかった。情報も少なく、家族だけで全部するしかないとがんばっていました。子どもも小さい時は家の中の狭い世界でよかった。けれど成長するにつれ、もっと広い社会、家族や関係者以外の人たちと接する機会が必要だと考えるようになって」。10年前、学校や同じ状況の保護者に働きかけて障害児の地域生活を考える活動を始めた。その延長線上に「つなサポ」がある。

 5団体合わせた家族数は約90。身体障害や知的障害、自閉症の子どもたちがいる。運営委は、各団体代表と特別支援学校教員ら12人で構成し、「つながりサポート隊」と呼ぶボランティアを募り、子どもたちの活動や経験を広げるきっかけづくりをする。現在、高校生から年配まで3団体と25人が登録。もちつきや、映画会、山登りなどに加わっている。

 「無理せずに、得意な分野で長く付き合ってほしい。子ども連れの方がイベントの手伝いに来てくださった時、自分の子の世話で手いっぱいになってしまった。でも会場に来てみて私たちの状況が分かり、私たちもその方と知り合えた。そうしたつながりも大切」。橋本さんは、かかわることから自然な支援の輪が広がると考える。

 大きなイベントは毎年12月に舞鶴市浜の舞鶴市総合文化会館で開く「つなフェス」がある。つなサポの団体や子どもたちの紹介、きょうだいや親に障害がある人の意見発表などで市民にメッセージを送る。ボランティア講座や勉強会も開く。東日本大震災後は、「災害時の障がい児者支援を考える集い」を始めた。今月1日に西舞鶴駅の西駅交流センター内で2回目を開き、被災障害者の支援を続けるNPO関係者の話を聞いた。

 「震災後、つなサポの親たちに『もし被災したら子どもたちは…』と不安が広がった。不安がるだけでなく、皆で課題を共有し、備えを模索しなくてはと企画しました。福祉避難所が指定されても、その意味を知らない一般の人もいる。知らなければ一緒に考えてもらえない。親でない人が挙げてくれる一声は力になります」

 外部に呼び掛けるだけでなく、自分たちができることを考える。今夏から当事者や家族を対象に災害時の障害児者支援に関するアンケート調査を始めている。

 「理想を言えば、将来はサポート隊に企画や活動を任せられればいいですね。したいことは沢山あります。親が亡くなった後、きょうだいに頼らずに子どもたちが生きていけるよう、グループホームをつくるのもそのひとつです」。さわやかな笑顔で言い切った。