ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

障害者スポーツを推進
参加しやすい環境つくる

 

原 陽一(はら・よういち)さん



 障害者スポーツ振興のための任意団体「滋賀県障害者スポーツ協会」=大津市御陵町4の1、県立スポーツ会館内、077(522)6000=で理事を務める原陽一さん(50)。陸上、水泳、卓球、アーチェリーなど10部会ある専門委員会の委員長であり、競技力向上委員会委員長でもある。

写真
「忙しいと感じたことはありません。仲間と一緒にできることが楽しいから」とさわやかに語る原陽一さん(滋賀県障害者スポーツ協会)
 各種の競技会や会議が毎週ほどあり、栗東市役所に勤める原さんの休日や終業後は、瞬く間に埋まってしまう。

 7月最後の日曜日は県障害者スポーツ大会・ボウリング競技が大津市内で開かれ、知的障害のある人たち67人が参加した。来年秋に長崎県で開催される全国障害者スポーツ大会の出場選手選考会を兼ねている。原さんは全国を目指す参加者のレーンで、競技補助をしながら見守った。「一生懸命に競技する仲間を見ていたら元気がでます」と、とびきりの笑顔をみせる。

 原さんは6歳の時に病気で右足を大腿(だいたい)部から失ったが、運動が好きで小学校高学年からは水泳を始め、中学、高校時代も水泳部で活躍。高校3年生だった1981年、滋賀県で開かれた全国身体障害者スポーツ大会に出場する。それまでは障害者スポーツと自分を結び付けたことはなかったというが、「大会でさまざまな障害がある人が頑張っている姿に触れて、障害者スポーツに対する考え方が変わったように思います」と、気持ちの変化を振り返る。

 米国などで国際的な身体障害者スポーツ大会に出場する経験もし、協会独自の指導員資格も取るうちに、次第に競技者から指導者の立場へ。20代半ばには、水泳のコーチなどで指導力を発揮。全国大会に出場する県選手団の総監督も務め、滋賀の障害者スポーツ全体を引っ張っていく役目が増えた。スポーツ分野以外の身体障害者福祉団体でも役職を引き受け、障害者が社会参加する後押しをする。これらの活動に対し、2009年に障害者福祉に貢献した個人に贈られる第一回糸賀一雄記念奨励賞を受賞した。

 県障害者スポーツ大会の参加者は近年減少気味で12年度は4年前に比べ2割減り、1112人だった。「スポーツをしたいと思っている人はいるはず。障害者スポーツに関する情報を広く伝えて、参加しやすい環境をつくり、発掘しなくてはならない。全国大会に出た選手は地元でスポーツの魅力を伝えてほしい。次代を担う若い人を育てていくことが大切だと思っています」と課題を語る。「多くの仲間がスポーツを楽しめるよう、障害者スポーツの運営や企画にかかわれるよう、と尽力する先輩たちの姿を見てきました。その熱い思いを引き継いでいきたいと思っています」

 11年に制定されたスポーツ基本法は、前文で「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」とうたい、基本理念で障害者スポーツの推進に言及している。社会的な変化が期待されるなかで、原さんは自分がすべきことを一歩一歩進める。本年度は日本障害者スポーツ協会の上級指導員資格を取得するための講習会通いも加わり、東奔西走が加速する。