ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

コンビニで障害ある人を雇用
職場の一体感が強まった

 

小泉 浩(こいずみ・ひろし)さん



 「障害がある人を雇用するのは大企業や余裕がある会社。自分には関係ないと思っていた」。宇治市と八幡市内で精神障害のある人を受け入れているコンビニエンスストア経営者、小泉浩さん(44)は3年前を振り返る。

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「はちどり」のメンバーが経営する飲食店で話す小泉さん。取り組みを始め「人脈も広がった」という(宇治市大久保町)
 京都中小企業家同友会会員として、全国交流会で聴いた報告が変化のきっかけだった。不況時も障害がある人を雇用し続け、雇用拡大に尽力する工場経営者が「一歩始めてみることが大事。(雇用することは)生産性の向上になる」と穏やかに語った。経営者としての強さ、志の高さ、優しさに感銘を受けた。

 京都府には精神障害者社会適応訓練事業がある。地域の保健所が窓口になり、協力事業所に訓練希望者を紹介し、サポートしながら精神障害がある人の社会参加と就労を支援する事業だ。小泉さんは「初めてでも専門機関のサポートがあれば取り組める」と、2011年10月から宇治市の店舗で女性1人を受け入れた。

 訓練が軌道に乗るまでは小泉さんも店に出向き、現場責任者の店長と共に彼女を見守った。「毎日接しているとその人に合った仕事が見えてくる。一生懸命に仕事をされるし途中で投げ出すこともない。その人の個性を生かす仕事をイメージすれば、働いてもらう場面はいくつもある」

 月に1度は管轄の山城北保健所や福祉事業所の担当者、小泉さんらが、本人を交えてケア会議を開き訓練を重ねてきた。女性は青年期に統合失調症を発症し長らく社会参加が難しかったが、今では「表情が明るくなり体力、気力もついた」と関係者は改善ぶりを喜ぶ。本人も「私の例で、いつからでも(就労への)可能性があることを知ってほしい」という。

 八幡市の店舗には、9カ月の訓練を経て昨年10月からアルバイト雇用となった女性がいる。現在は週5日勤務し、接客、レジ、商品発注とすべてこなす。「アルバイトのリーダー的な存在」と小泉さん。「彼女たちが実習したり、働いていることで、一番変わったのは一緒に働く人たちの意識。店長は、ハンディがある人を受け入れることにも大きな自信をつけた。離職率が高いといわれるコンビニだが、少なくともうちでは定着率が確実に高まった」と言い、職場の一体感が強まり、モチベーションが上がったと感じている。

 小泉さんは、地域の企業や福祉事業所、保健所、病院、支援学校などが自主的に集まり障害者の就労に取り組む「山城障害者就労サポートチーム調整会議」(通称・はちどり)に加わる。また昨秋、「山城北圏域はあとウォームカンパニー事業」(実施主体・府山城北圏域障害者自立支援協議会)の認定企業として承認された。障害者雇用に積極的に取り組み、雇用が企業に良い変化を与えることを理解し、外部に理念を発信できる─といった条件に当てはまるからだ。

 「障害者雇用は経営者にとっても可能性がある世界。どんな業種にも働いてもらう場はある。多くの企業は情報がないから踏み出せないだけ。今後は地域の就労先を広げていく手助けをしていきたい」と、次の目標を掲げている。