ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

自作のコントで奉仕活動
地域に笑い 元気ふりまく

 

西田 修身(にしだ・おさみ)さん



 南丹市の園部公民館の一室。「スチュワーデスを出すのは最後にする方がいいな」「ここは少し飛んでいる。何か台詞(せりふ)を入れよう」。息の合った3人が練習を通して意見を出し合い、コントに厚みを付けていく。その中心にいるのが西田修身さん(71)=同市園部町。コント集団「劇団3人」の代表だ。「施設などでの公演で、みなさんが思いっきり笑ってくださるのが何よりの楽しみ」と、常に奉仕の気持ちを大切にする。

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お年寄りに喜んでもらうために定期的に集まり、コントの芸を磨く「劇団3人」(左から西田修身さん、林佐紀子さん、小越和子さん・南丹市の園部公民館)
 電器関係の修業時代を経て、35歳で電気工事業を興した。顧客の気持ちに寄り沿った丁寧な仕事ぶりでいち目置かれ、自身も「人のため、地域のため」を心掛けてきた。「区長をやってもらえないか」。50歳になったばかりだったが、園部町口司(こうし)の区長を引き受けた。

 秋の敬老会は地域の大きな催し。「お年寄りたちに楽しんでもらえる何か、面白いことは出来ないだろうか」。悩んだ末に考えついたのが、コントだった。『食中毒にご用心』とのタイトルを付けた台本を自分で作り、他の区役員とともに上演した。内容は、夫婦で暮らす家に押し入った泥棒が、飲んだ牛乳で腹痛を起こし、大騒動の一幕もの。「鍵は一つのドアに2個取り付けるように」と言った教訓も織り交ぜながら披露した。「いつも以上に楽しい敬老会だった、と喜んでもらえたのがうれしかった」と振り返る。

 その後は、仕事も忙しく、コントとは遠ざかっていたが、「高齢者にいつまでも健康でいてほしい。その手助けになる笑いを届けよう」と、自身も高齢者の仲間に入っていた3年前の秋に「劇団3人」を結成、旗揚げ公演を行った。活動ぶりが知られてくると、丹波一円の福祉施設や各地域の敬老会、健康づくりのいきいきサロンなどから公演依頼が次々と舞い込み、ここ3年の上演回数は30回以上に上る。

 今のメンバーは同じ町内に住む林佐紀子さん(65)と小越和子さん(63)。「本当は気が小さくて、本番の上演には弱い」という西田さんの強力な仲間だ。小越さんは「チームワークはとてもよい。今では、セリフが脱線しても、コントはうまく進行できる」と自信を持つ。林さんは「西田さんの人を喜ばせてあげたい、どうすればもっと喜んでもらえるか、その前向きな姿勢には感心する」と話す。

 今の持ちネタは『食中毒にご用心』のほかに『コンビニ医院』がある。この作品は「町のコンビニのように、24時間、どんな病気でも手軽に診てもらえる医院があれば助かる、との思いからコントにした」と西田さん。話題の多い小保方晴子さんも登場させるなど社会の関心事も見逃さない。小道具の聴診器やカルテ、髭(ひげ)などは3人で手作りして舞台に上がる。

 新しいコント作りにも余念はない。家族との会話に注意を払い、新聞にもよく目を通す。「30分ほどのコントにまとめるとなると、難しい」と言いながらも、探究心は旺盛(おうせい)だ。また、南丹市内には漫才や落語のグループもあり、「他のグループとのコラボレーションができれば、もっと楽しいはず」と期待する。

 「久しぶりに大声で笑った」「毎月でも来てほしい」。公演先では温かい言葉を掛けられる。「でも、結局は、私たちもみなさんから元気をもらっている」と感謝を忘れない。