ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

障がい者の目線で相談に乗る
自信持ち生きる、を支援

 

畑中 由美(はたなか ゆみ)さん



写真
同僚と相談しながらホームページの更新作業に当たる畑中さん(左)。いつも笑顔で仕事を続ける(長岡京市神足・バンビオ1番館)
 「あっ、畑中さんや。こんにちは!」。秋晴れの9月末、長岡京市内の小学校で開かれた運動会。めいが通い、電動車いすで応援に駆けつけた畑中由美さん(48)を見つけると、児童たちは次々と声をかけた。小中学校の福祉学習の授業に講師として招かれ、この学校でも数度、授業を受け持った。

 「授業では自分の障がいのことや日常生活などをありのまま話し、最後はどこでも出会ったら声を掛けてね、と言って終わります。気さくに呼びかけられるのがうれしい」

 自宅からJR長岡京駅そばの職場まで車いすで20分ほどの通勤途中でも「おはよう。車に気をつけや」などとあいさつされる。だれからも好かれる人柄がにじみ出る。

 職場は市総合生活支援センター内の障がい者を対象に支援する「キャンバス」。市社協が運営する施設で、40人ほどの職員が働くが、障がい者は畑中さん一人。肩書はピアカウンセラーと相談支援専門員。各種相談や障がい福祉サービスのプラン作成のほか、社協のホームページの作成も担当する。ピア(仲間の意味)カウンセラーは、相談に来る障がい者に、同じ目線で話を聞き、最善の方法を探っていく仕事だ。「相談者が自信をもって生きていけるように、サポートをするよう努めている」と話し、「畑中さんに話を聞いてほしい」と指名してくる人も多いという。

 脳性小児まひで生まれつき両手足に障がいがあり、車いすは欠かせない。言語障がいもある。府立向日が丘養護学校を卒業後、通所施設に23年間通った。「障がいはあるが、地域で健常者とともに自分にできる仕事がしたい」。そんな思いを抱き続け、ピアカウンセラーの仕事と出合った。長期の養成講座を受け、2007年4月からキャンバスで非常勤職員として勤務するようになった。

 職場では昼食やトイレ、通勤時などで同僚職員の介助をうけているが、一方で「パソコンのことは畑中さんに聞けばよい」と一目置かれる存在。パソコンのトラブル解決はお手のものだ。「両手足が不自由でも、時間をかければ文章作成など出来ないものはない」といい、特殊なマウスを左足で巧みに操作し、キーボードは父親考案の特製の棒を口にくわえて文字を打ち出す。ホームページは毎月更新し、各部署から集まる原稿にルビを振って使用したり、新しい情報が市民にひと目で分かるように工夫している。

 同僚の白石美津子さんは「人間として素晴らしい人。控えめな姿勢の中にも芯がしっかりしていて、常に周囲に気を配っている。この職場になくてはならない女性」と話す。畑中さんは「どんな時も笑顔でいるように心がけている」といい、「私は、何をやるにも時間はかかるが、相手の話をしっかり聞き、約束したことは必ず守る」と自負する。福祉サービスプランづくりには苦労することも多いが、行政や事業所との調整などに全力であたる。

 キャンバスに就職して8年。日常生活も行動的になり、好きなアーティストのコンサートにもよく出かける。「少し勇気が持てるようになったし、多くの人との出会いが楽しい」と振り返る。趣味のパソコンで夜遅くまで友人と会話するのが息抜きといい、いつも午前さまの日々が続く。長岡京市内の実家で両親らと8人暮らし。