ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

つながり生かし子育て支援
母を元気に。地域を明るく

足立 喜代美(あだち・きよみ)さん


写真
「お母さんたちが元気ならば、家庭も社会も明るく、楽しくなる」と足立さん(中央)。子育て中のお母さんを見る目はどこまでも優しい
 一人の女性が生涯に何人の子どもを産むかを表す数値(合計特殊出生率)が京都府内でもっとも高い1・96の福知山市。この地で子育て支援のNPO法人「おひさまと風の子サロン」の事務局長として足立喜代美さんは忙しく飛び回っている。「お母さんたちがわが子とともに集い、語り合い、楽しく子育てをしてほしい。その手助けができれば」と謙虚に語る。

 同市中ノの事務所では、絵本の読み聞かせや助産師さんとのおしゃべりサロン、抱っこひも相談会などを定期的に開催。このほか、別の施設では「おひさまひろば」と名付けられた親子エクササイズ、ベビーダンスなど凝った催しもあり、多い時は300人以上の親子が参加する。「法人のスタッフの方たちが次々とアイデアなどを出してくださり、子育て中のお母さんたちがネットワーカーとして協力していただける。私は運営面の調整役」といい、「子どもの笑顔があれば、疲れは吹っ飛ぶ」と子どもたちに限りない愛情を注ぐ。週3日は放課後児童クラブの指導員も務める。

 小学低学年の一時期、不登校になった。そんな時、親と担任の教師が連絡を密にして立ち直りを手助けしてくれた。「子どもの成長には大人同士の助け合いが不可欠と思う」と振り返る。結婚して2人の娘を授かった。娘たちが幼い時、お母さん同士のつながりを深めたいと、市内の子育てサークルに入った。他の子育てサークルともつながりができ、1992年には仲間が集って行政とともに「子育て広場」を開設し、持ち前の行動力と温和な人柄が請われて運営委員の一人に推された。2007年にはこの子育て広場が市の委託事業として自主運営にかわり、自らが「おひさまと風の子サロン」を立ち上げ、運営母体になった。「子育ての輪が広がり、子どもたちが楽しく遊べる場にするにはどうすべきか、常に考えている」と話す。定期的に発行する情報誌「おひさまひろば」も編集、最新号で81号を数えた。また、この春には地域情報を紹介するフリー冊子「福知山じかん」の創刊にもかかわった。「福知山の元気な人を取り上げることで街が動き、子育て環境もよくなる」と力説する。請われれば、子育てをテーマにした講演会にパネリストとしても登壇する。

 福知山市はこのところ度々、大水害に見舞われている。一昨年8月の記録的豪雨では街が冠水し、多くの住宅が濁水に浸かった。「幼い子どものいる家庭もたくさん被災した。お母さん同士が助け合おう」と、サロン活動の仲間でもある笹部美佳さんらと、すぐに福知山ママボランティアLINKを結成。ネットを通して母親を対象に協力者を募り、支援物資を集めたり、子どもを預かったり、民家の泥かきなどにも力を発揮した。同LINK副代表も兼ねる足立さんは「日ごろのお母さん同士のつながりが災害の時にも生かされた」と喜び、昨年8月には子育て家庭向けの防災ハンドブックも作成した。

 子育てのサロン活動が始まって四半世紀。以前、お母さんに連れられて来ていた女の子が母親となって訪れる人も。「長く続けてきたからこその出会い。うれしい。まだまだ、頑張りたい」。孫はまだいないが、「いつか、孫とサロンで遊べれば」と夢見る。