ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

地域、人 ふれ合い大切に
お年寄りの憩いの場づくり

古海 りえ子(ふるみ りえこ)さん


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元気塾では希望者に昼食も調理する。「住民から季節の野菜類がひっきりなしに届けられ、地域にお年寄りを支える輪が広がっている」と古海さん(右)=京都府精華町東畑
 避けられない老いにどう向き合うのか。「70歳、80歳になっても、寂しくないおばあちゃんでいるために地域や人とのふれ合いを大切にしたい」。そう語るのは京都府精華町のNPO法人「みんなの元気塾」副理事長で、さわやか福祉財団のさわやかインストラクターを務める古海りえ子さん(64)。古海さんの周りではいつも、笑顔と元気な会話が飛び交っている。

 元看護師。3人の子育て中は仕事を休んでいたが、登録しておいた精華町の役場から「町直営のデイサービスを手伝ってほしい」との依頼が来たのが1994年。100人以上の高齢者とかかわるようになり、健康チェックをはじめ、さまざまな相談や話し相手になってきた。「年を取ると寂しい。孫と同居していても忙しくて、年寄りの長話には付き合ってくれない」「週に一度のデイサービスが唯一の楽しみ。ここでしか、話し相手がいない」。古海さんは連日、お年寄りの悩みに耳を傾けた。人の老いと向き合わざるを得なくなり、「どうすれば多くの人が寂しくない人生の終わり方を迎えることができるのか」と悩んだ。

 2000年に介護保険制度が始まると、デイサービスが町から町社協に移管され、社協職員の責任者に任命された。高齢者のケアプランも作成し、自宅を訪問して家族からも話を聞くようになった。「健康づくりに異常なほど気を遣うお年寄りの家庭を訪ねると、同居のお嫁さんからはそうしたお年寄りの姿勢に反発もあった。高齢者問題の難しさを感じた」と振り返る。

 「年を重ねたら、元気なうちから家族以外に、人と『つながる場』が必要ではないか」。そう考え始めた時に出合ったのが、さわやか福祉財団(堀田力会長)発行の冊子「ふれあい居場所づくり」だった。地域が高齢者を支えている全国の先進地が紹介され、「お年寄りたちが寂しくならない、こんな居場所を私たちの地域にも作ろう」と構想を練った。福祉財団と連絡を取る一方、59歳で社協を退職、精華町内で同じ考えの人が集まり、開設準備を進めた。そして10年6月に同町東畑地区に古民家を利用した「元気塾」(森田起一代表)が誕生した。週4回開催し、地元のお年寄りたちの憩いの場となっている。「昼食も調理しているが、野菜類は一年を通して差し入れがあり、春にはタケノコ、夏には花オクラなどもたくさんいただく。それに、多くの人たちがボランティアとして運営に協力してくださる。元気塾を通して、お年寄りだけでなく、地域が豊かに親切になっている」と喜ぶ。

 こうした積極的な活動を評価され、3年前にはさわやか福祉財団のさわやかインストラクターにも委嘱された。このインストラクターは現在、全国に155人(京都4人、滋賀3人)が活動している。堀田会長とも話す機会はよくあるが、「生きづらい世の中だからこそ、助け合いの社会が必要」と説く会長の思いと重なる。

 佐賀県唐津市出身。福岡・博多にある日本赤十字の専門学校で看護師を目指し、「人に喜んでもらう、人の世話をする」精神をたたきこまれた。故郷の病院に就職したが、結婚を機に大阪に。夫の仕事の関係で奈良市、そして精華町の学研都市内に住居を構えた。先月、2人目の孫が誕生し、「いつまでも、元気で明るいおばあちゃんとして、孫とふれ合いたい」。