ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

前を向く気持ちサポート
笑いヨガで元気を後押し

木村 祐美(きむら ゆみ)さん


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笑いヨガの教室で参加者と体を動かす木村さん=(中央)=京都市右京区のサンサ右京
 3月下旬の土曜日、京都市右京区の教室に参加者が集まり、円く並べられたいすに腰掛けて笑いヨガ講師木村祐美さん(42)=北区=の話に耳を傾ける。「では、順番に自己紹介をして笑いましょう。私は、祐美と申します」。木村さんの自己紹介が終わると同時に、「アハハハハハ」と参加者は大きな声で笑う。「わざと笑う」ことで健康増進につなげる笑いヨガ。笑いのエクササイズとヨガの呼吸法を組み合わせたインド発祥の健康法だ。参加者が自己紹介するたび、一体となった笑い声が教室に響く。

 笑いヨガは、日本では2006年ごろから普及が始まり、中高年を中心に人気が広がっている。この日の講座には、中高年の男女約10人が参加。笑いながら体を動かしたり、目と目を合わせて笑ったり、歌と笑いを組み合わせたり、終始活気にあふれていた。

 木村さんが笑いヨガに出会ったのは08年。環境の変化や人間関係の悩みがきっかけで高校生の頃からうつ病を患い、人生に絶望する日々が続いていた。「現状を変えたい、変わりたい」という気持ちでヨガを始め、笑いヨガの存在を知った。指導者の資格を取得し、09年に講座を開始。体調を崩して5年間中断していたが、今年に入り、NPO法人京都難病支援パッショーネ(右京区)に参加したことがきっかけで再開した。最初は法人のメンバーとしてものづくりをしていたが、「自分がやりたかったことにもう一度挑戦したい」と考え、「笑いヨガ&笑歌(わらうた)」の事業をスタート。現在は毎週土曜の午前に、右京区のサンサ右京で有料の講座を開いている。

 再開を機にもう一つ新たに始めたのが、参加者が静かに穏やかに笑い、前向きになるのをサポートする「一歩踏み出す笑いヨガ&笑歌」のプログラムだ。笑いヨガは、笑うことでやる気が出たり心身が元気になったりするため、普段大きな声で笑う機会がない人、今よりも健康になりたい人たちが多く受講する。講座を重ねる中で、かつての自分のように「外に出るのがやっと」というような人は、楽しい雰囲気に気後れして来られなくなってしまうことに気がついた。そのことがずっと気がかりだった。

 「本当は、うつ病で全然笑えなくて無表情と言われて、何とかしたいのにどうすることもできない人たちに届けたい。たくさんいると思うんですよ」。自分自身も経験したから、つらさがわかる。

 「無理せず、静かにゆっくり笑って歌い、自分のやりたいことをみつけて元気になってもらえるように」と考えたプログラム。「やりたいことワーク」を取り入れ、課題を家に持ち帰って実践することで前向きな気持ちになるような内容だ。「私自身、やりたいことをやろうと思って元気になれたから、それが見つけられるよう背中を押したい。そして、一緒に元気になっていきたい」。当事者目線で寄り添う講師としての再出発だ。

 「教室に行くことを思うと、最初はドキドキして緊張するかもしれない。私もそうだった。でも、勇気を持って一歩踏み出して欲しい」。一歩のその先には、一緒に笑ってくれる講師がいる。

 (フリーライター 小坂綾子)