ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

特性に合わせ力引き出す
不登校・発達障害の子の塾

鈴木 (すずき)正樹(まさき) さん


 「アットスクール」の看板がかかった草津市のビル。学習塾だが、対象は幼児から高校生までの不登校や発達障害のある子どもたちだ。子どもの力を引き出し、勉強面と発達面を両面で支援する学びの場。「子どもの自立と家族の笑顔」を掲げ、教育相談や心理相談も手がけ家族を支えている。「子どもは十人十色で、皆声にならない声を持っている。じっくり耳を傾け、特性に合う形で学力と人間性を育みたい」。代表取締役の鈴木正樹さん(52)は思いを語る。


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母親の話を聞き、一緒に子どもの育ちを考える鈴木正樹さん(草津市)
 「アットスクール」の看板がかかった草津市のビル。学習塾だが、対象は幼児から高校生までの不登校や発達障害のある子どもたちだ。子どもの力を引き出し、勉強面と発達面を両面で支援する学びの場。「子どもの自立と家族の笑顔」を掲げ、教育相談や心理相談も手がけ家族を支えている。「子どもは十人十色で、皆声にならない声を持っている。じっくり耳を傾け、特性に合う形で学力と人間性を育みたい」。代表取締役の鈴木正樹さん(52)は思いを語る。

 アットスクールの創業は2005年。きっかけは、別の学習塾に勤務していた時に家庭訪問で出会った、不登校の中学生との対話だった。大人に対して閉じていた心を開き、「行きたいのに行けない」「高校にも進学したい」と思いを打ち明けてくれて、高校受験まで伴走した。不登校の背景に発達障害がある子どももいることを知り、困難を抱える生徒の支援を提案したが勤務先では認められず、離職して特化型の学習塾を創業した。

 学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などのアセスメント(評価)や指導に関する教育と心理の民間資格である「特別支援教育士」、教育カウンセラーの資格を取得。家庭教師派遣や個別指導から始まり、人と関わって生きるのに必要な訓練「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」や発達検査、保護者向けの教育相談などニーズに応じてメニューを増やしてきた。集団の中で意思表示できなかった子がSSTを受けて自分に自信を持てたり、教材や勉強法を本人に合うよう工夫することで学習意欲がわいたり、さまざまな変化が現れている。

 現在は、滋賀県と大阪府に計6教室を開設。また昨春には、通信制高校と提携して通信制サポート校を開校した。さらにこの4月には、草津市に不登校の子に向けたフリースクール「まいぺーす」を開設予定で、週2回、ボードゲームやプログラミングなどをして過ごす予定にしている。

 「所属感を持ちたい子もあり、昼間に行ける場も必要」と考えていた鈴木さんにとって、フリースクールの開設は念願だった。「子どもが学ぶ場を『学校』とするなら、それは家庭でも地域でもよく、不登校は、その子にとってその学校が居場所ではなかった、ということ。親子が安心して一呼吸でき、次のステップに移れる場があることが大事で、それは民間であってもいい」。17年の教育機会確保法施行によって学校以外の学び場が法律で認められたことで、その思いをより強くしている。

 わが子が不登校になると、「行きたくない」子どもと、「来てほしい」学校との板挟みで苦しむ親も多い。親と学校の話し合いが難しい場合など、第三者として加わることもある。「先生も親もしんどくて、ついお互いを責めてしまったり、また学校と民間が敵対してしまったりすることもある。でも、学校と家庭、民間の役割はそれぞれ違う。子どもを信じ、『この子がどう思っているのか』『どうすれば元気になるか』を一緒に考えたいし、子どもをみんなで支えようーという風潮が広がってほしい」。学校と家庭、地域を結ぶ「ハブ」的な存在を目指していく。

 (フリーライター・小坂綾子)