京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●この人と話そう
悩み共有、自己決定手助け |
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《中田さんは京都府と兵庫県のセルフヘルプ支援センター代表を務めています。まずセルフヘルプグループとは何か教えて下さい》
病気や障害など同じような生活困難や生きづらさを抱える人が集まって、思いを分かち合い支え合って生きる勇気や希望を得たり、社会制度の改善を行政に訴えたりするグループです。障害当事者や介護に携わる人、酒や薬物依存の人など多様で、活動もさまざまです。たとえば「不登校の子どもを持つ親の会」では、公園でボランティアの大学生と、学校に行く子も行かない子も一緒にスポーツを楽しむ活動をするところがあり、またフリースクールやホームスクーリングなどを実践しているところもあります。私はそれらのグループの立ち上げや運営支援をしています。
《中田さんがかかわったきっかけは何ですか》
専業主婦だった1977年、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)の子を持つ親の会に携わりました。グループでは、母としてどうケアすればいいのかなど、先輩のお母さん方から、自身で体験した知識など多くのことを学びました。入会は長男の手術後だったのですが、限られた情報しかない中で医療の選択をしたことを反省しました。
《その後、研究者の道に進んだのですね》
ソーシャルワーク(社会福祉援助技術)を学びましたが、その中にセルフヘルプグループが位置づけられていないことに疑問をもち、社会福祉士などの援助専門職がクライアントにセルフヘルプグループを紹介してくれるよう、論文や学会で言い続けてきました。
《その間にひょうごセルフヘルプ支援センターを立ち上げていますね》
セルフヘルプグループは良い活動しているのに組織は弱くてつぶれやすい。それが残念で県内で横断的に支援するため2000年に立ち上げました。当初は80団体ほどでしたが今は258団体に増えました。
《その後、京都でも支援センターを作るのですね》
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「セルフヘルプグループのメンバーは、仲間を援助することによって自分も生き生きと暮らしていくすべを獲得します」(佛教大で、写真・遠藤基成) |
グループの活動は生活困難に対する問題解決能力を高めますし、地域社会に援助のネットワークを築きます。そういう意味で地域福祉を担っています。行政との関係で言えば、私たちが把握したニーズを提言していくことは行政にとっても望ましいことです。
社会福祉協議会内に事務所を置いたり、助成を受けたりするグループも増えました。この十数年で社会的に認知されてきたからですが、逆に、組織の自立性がそこなわれないか注意が必要ですね。
《中田さんの授業「セルフヘルプ論」は他に類例がないと思います。どんな工夫をしていますか》
時には、グループの代表に授業で話してもらいます。学生の多くは社会福祉士や精神保健福祉士、保育士を目指していますが、生きづらさを抱えた人はグループを作って積極的に立ち向かっていく力のある人たちだということを知っておいてほしいのです。
なかだ・ちえみ
佛教大社会福祉学部教授(博士・臨床教育学)。1944年、大阪市生まれ、神戸市在住。神戸女学院大卒。関西大大学院博士課程修了。96年、武庫川女子大助教授。2005年から現職。ひょうごセルフヘルプ支援センター代表、きょうとセルフヘルプ支援センター代表。著書に「セルフヘルプグループ―自己再生を志向する援助形態」など。