京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●この人と話そう
美容がツール がん患者ケア |
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男性がん患者の言葉に耳を傾ける。「皆さん、お互いの体験を熱心に聞き合いながら、前向きに、楽しそうにしておられました」(京都市中京区・京町家さいりん館室町二条) |
《三田さんは、がん患者や家族の心のケアに取り組んでいます。具体的にはどんな事業をしているのですか》
美容をツールに、がん患者さんの外見面をサポートしています。自毛(じもう)のカットやウィッグ(かつら)の準備。まゆ毛やまつ毛などのメイク。帽子などの便利グッズの販売も行っています。
《今の事業に取り組む目的は何ですか》
がんそのものはもちろんですが、抗がん剤や放射線治療の副作用で脱毛や外見の変化が生じることは、女性にとって非常につらいことです。闘病中であっても美しく楽しく過ごすことができれば生活の質も上がり、気持ちも前向きになることができるので、そのお手伝いをしたいと思っています。ネットや口コミで知って訪ねて来て下さる方が多く、若い患者さんもいて病院では聞けないような個人的な悩みも相談して下さいます。
《近年はがん患者が増えているので、三田さんの事業の必要性が高いですね》
はい。昔のようにがんは「死ぬ病気」でなくなりました。半面、女性が40代でり患したとすれば、後半生を再発の不安と戦いながら生きることになり、そのためのケアが必要です。もちろん抗がん剤投与が終了すれば髪の毛は生えてくるのですが、それまでの1年か2年の治療の間にも一人一人の仕事や生活はあるわけですから。
《病院ではそういうサポートはしないのですか》
病院はまず治療に専念しなければならず、看護師さんらも日々の仕事で大忙しです。患者さんにとって相談はできても支援を受けることまでは難しいのではないでしょうか。ただ患者さん自ら情報収集するなど大変な作業を強いられている現実を考えれば、みんなが一緒にできる仕組みづくりが欠かせません。
この4月から、医療従事者や患者団体、がんサロンなどでつくる京都府がん患者団体等連絡協議会という会の役員に就任しました。行政も交えて、みんなで京都の、そしてがん患者さんとご家族のQOL(Qualityof Life=生活の質)を上げていきたいです。
《がん患者や家族の集いも開いているのですか》
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さんだ・かな
1983年生まれ。京都市中京区出身、長岡京市在住。
高校時代にカナダ留学。同志社女子大英文科を経て同志社大大学院総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション研究コース博士後期課程在学。2007年10月、美容師国家資格取得。山野流着物着付け講師。第7回京都学生人間力大賞グランプリ受賞。築90年の家を手直しした「京町家さいりん館室町二条」を拠点とする。烏丸御池(京都市中京区)にがん患者らのための情報窓口やサロンを兼ねた美容院を計画している。