京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●この人と話そう
患者の家族に滞在施設提供
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予約担当の古賀さん(左)、会計の松永さん(右)と話す加納さん。3人は月1回、京都ファミリーハウスの進め方や問題点について相談する機会を設けている(京都市中京区・ハートピア京都) |
《なぜそのような施設が必要なのですか》
自宅から遠く離れた病院で、病気の患者を支えるご家族は、治療や手術の不安に加えて宿泊の心配までしなければなりません。二重生活を強いられる経済的負担は大きく、慣れない土地での生活で精神的にも厳しい状況です。そのようなご家族が、安心して安く宿泊できる施設が必要だと考えました。
《施設の運営はどのようにしているのですか》
現在は6カ所12室を用意しています。難病患者が全国から訪れる京都の病院は、京都大医学部附属病院(京大病院)と京都府立医科大附属病院(府立病院)が多いので、そこに自転車で10分以内に到着できる範囲に絞っています。一泊1500円で1人3カ月までに限っていますが、ほぼ満員でキャンセル待ちの状況です。病気によっては3カ月を超える入院と付き添いが必要なこともあり、泊まれない人には、割引料金で契約している旅館を紹介します。
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《その中で仲間との出会いがあったのですね》
はい。小児がんのお子さんをもち、付き添いのため東京から京都に長期間滞在した体験をもつ古賀會委(えい)子さん(55)、心臓病のお子さんがいて「全国心臓病の子どもを守る会京都支部」に携わる松永みはるさん(55)ら多くの仲間に出会いました。この種の施設の必要性を痛感して意気投合し、3年の準備期間を経て05年に「京都ファミリーハウス」設立に至りました。
さまざまな事情から3人が中心になり私が事務局、古賀さんが予約、松永さんが会計とホームページ担当です。
《部屋はどのように確保したのですか》
京都新聞で記事に採り上げてもらったのが縁で、子どもを病気でなくしたという伏見区の女性が、自宅の数部屋を提供してくれたのが最初です(現在は閉室)。その後、京大病院の近くのワンルームマンションの部屋を提供してくれる人らが出てきました。
《宿泊施設の存在はどのようにPRしているのですか》
入院患者のご家族みんなが京都ファミリーハウスを知って選択肢の一つとして考えてくれればいいなと思っています。そのため病院にポスターやチラシを置いてもらったり、入院の説明案内と一緒に渡してもらうなど、医師や看護師の皆さんにも協力してもらっています。
《利用者からどんな感想が寄せられていますか》
各部屋にノートを置いて利用者の思いを書いてもらっています。感謝の言葉をいただくほかに、他の患者家族とのコミュニケーションや励まし合いの端緒になりそうなものもあります。そういった文章は書いた人の了解を得て、会報に掲載してみんなに読んでもらいます。
《今後はどのように活動を続けていくつもりですか》
今は6カ所に分かれているのでボランティアのやりくりが大変です。理想は、30室程度を一つの棟に集約し、そこにソーシャルワーカーに来てもらい、患者家族の相談に当たってもらえる施設です。もちろん私たちだけの力だけではできませんが、最近は企業が病院に滞在施設を建設する動きもでてきています。今後ともさまざまな場面で訴えていきたいですね。
かのう・まさお
1929年、京都市生まれ。
51年、京都工芸繊維大(京都工業専門学校)卒。88年まで京都市職員として勤務。72年、仕事のかたわら京都「腎炎・ネフローゼ」児を守る会結成。74年、NPO法人京都難病連結成に参画して会長など歴任、現在は相談員。2005年、京都ファミリーハウスを設立し代表に就任。院内学級を京大病院(96年)と府立病院(05年)に開設する運動にも努めた。