京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●この人と話そう
がん患者の脱毛の悩みを包む
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縫い上げた帽子をかぶる京都タオル帽子の会のみなさん。色や柄はさまざまで、脱毛期のがん患者は好みに応じて選んで楽しめるという(京都市下京区のひと・まち交流館京都) |
《会にはどんな人が参加しているのですか》
何かのボランティアをしたかったという方や、昔、縫い物をしていたというお年寄りなどさまざまな女性ですが、30人の会員の半分くらいはがんの患者さんです。
作業は京都市下京区の「ひと・まち交流館京都」、上京区の自宅、京都桂病院のがんサロンきずな(西京区)、長岡京市の済生会京都府病院のがんサロンなでしこで集まって行います。こちらで提供したタオルを家で縫っている人やご近所の方同士のグループもあります。
《会員にがん患者さんが多いのはなぜですか》
帽子をきっかけにして話を聴かせていただくことが多いからでしょうね。夫をなくした人が大泣きしながら作業されることもありました。自宅での集まりでは聴くほうが中心になることもあります。一種のがんサロンですね。
《会を立ち上げたきっかけを教えて下さい》
タオル帽子は盛岡市の市民グループ「岩手ホスピスの会」の発案です。3年前、その会のメンバーが京都で講座を行ったという新聞記事を見て、私もやってみようと思いました。型紙を取り寄せて縫いあげて勤務先の桂病院の患者さんにかぶってもらったら、とても喜ばれて…。
看護師として定年を迎え、これからどうしようかと思っていた矢先だったので「これなら私もできるかもしれないなあ」と、1年ほどかけて院内ボランティアや有志の方と千枚ほど縫って桂病院の患者さんに配っていました。
《それから会の結成に向かうのですね》
はい。PTA仲間だった人ですが、家族ががんで亡くなった体験から「何か役に立つことはないか」と言っておられたのを聞いて、一緒にやろうと声をかけ、去年の11月1日に3人で立ち上げました。当時、京都新聞で採り上げていただいたので、興味を持った方が集まってくれました。
《配布先はどれだけあるのですか》
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おおにし ふさこ
1949年、愛媛県で11人兄弟姉妹の7番目として生まれる。65年、京都に。
病院や開業医のところで准看護師をしながら34歳で京都桂病院看護専門学校入学。2年後に卒業して同病院に就職。2009年8月に定年退職し、現在は再雇用制度で午前中だけ同病院の案内係として非常勤勤務。そのかたわら、がんサロンや院内ボランティア活動にも取り組んでいる。