京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●この人と話そう
音楽で発達援助に力貸す
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ピアノ、サックス、歌での語りかけで子どもの心の中に入っていく。「日常生活にも良い効果が出てきています」と母親も喜んでいた。(長岡京市) |
《具体的にはどのように進めるのですか》
私は、教え子の音楽療法士らとチームを作って、子どものための音楽療法室や、病院の緩和ケア病棟、総合病院などで入院、通院患者や高齢者に行います。
子どもの場合、ダウン症、水頭症、重度重複障害などで言葉による意思表示ができない子が多くいます。私たちはピアノのリズムと即興の歌で語りかけながら、心の中に入っていきます。すると相手は、少なくともイエスとノーは訴えることができるので、体を揺すったり声をあげたり楽器を放り投げたりします。気持ちに合わせて歌や演奏できるよう、多くの曲目と楽器を準備し、生の演奏で相手の反応を見ながら、安心できる時間を過ごしてもらえるようさまざまに変えていきます。
《どんな効果があるのですか》
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《音楽療法を施す際に気をつけていることは何ですか》
患者や子どもたちの音楽・言葉・しぐさに隠されていることから、求めていることを読み取るのが音楽療法士の大切な仕事です。言葉にならなくても、コミュニケーションをとっていますし、歌っています。緩和ケアや終末期ケアの場合、たとえ意識はなくても耳は聞こえていて反応がある場合もあります。継続的に行う場合はビデオ撮りし、反応を細かく記録します。
《音楽療法の歴史は長いのですか》
本格的には、米国で第二次大戦後に帰還した兵士の心のケアを目的にしたのが始まりです。日本では音楽療法学会ができて資格認定を始めてまだ20年もたっていません。しかしきめ細かなニーズに応えるには専門の音楽療法士が必要だということが、日本でも少しずつ理解されてきました。教育制度もまだ不十分ですが、そこに私の果たすべき役割があると思っています。
はまたに・のりこ
1947年生まれ。長野県出身。
70年、国立音楽大教育音楽科リトミック専攻(東京都)卒業後、千葉県で中学教諭となる。91年から96年までアメリカ留学。帰国後、近畿福祉大(兵庫県)を経て2004年に同志社女子大特任教授。音楽療法グループMTQ代表。長岡京市で子どもプログラム、市立長浜病院や大津市民病院などで音楽療法を実施。民族楽器を含め世界の数百種類の楽器を準備している。