京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●この人と話そう
五感で絵描き脳活性化
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この日の教室ではアジの干物を描く。「絵は誰にでも描けます。どの作品も、その人がその時に感じたことを反映して、魅力的な表現にできあがります」(京都市北区・アトリエ苗) |
《学校で習う美術との違いはありますか》
絵は感じれば誰にでも描けます。それは本来のアートです。下手な絵なんてないんですね。しかし一般には「そっくりに描ける=絵が得意」と思われがちです。そこで臨床美術では、苦手意識を持たれている方に一度の体験で「面白かった」と感じてもらえるような工夫がされています。
例えば形を描くことが苦手と感じる方も多いので、まず色、次に質感など、感じやすい部分、つかみやすい部分から描いてもらいます。アジの干物を描く場合だと、最初は背筋の一本線から入ってもらいます。色は実際のものだけでなく、味や香りも含めて色で表現していきます。
また、紅葉を描くときには、心に思い浮かぶ紅葉の色を使っていき、それが画面で混ざり合って、思い描いていた以上に味わい深い色になっていくという具合です。認知症の方々に続けていただく必要性から、誰でも楽しめる独特のスタイルが作られてきたのが臨床美術です。
《なぜそれが認知症に役に立つのですか》
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《フルイさんの夢は何ですか》
認知症の方とご家族のために、もっと臨床美術を知らせ、受けていただけるようにしたいです。また絵を描くなんて関係ないと思っておられる方に、描くことのワクワクドキドキ、楽しさ、解放感などを、臨床美術を通じて伝えていきたい。ビジネスマンのメンタルケアに役立てる企業も出てきています。その活動に自分でも関わりたいですね。
本名・古井三恵子。
1968年、大阪市生まれ。
京都市立芸術大大学院美術研究科絵画専攻修了。広告代理店勤務の後、私立高校非常勤講師。かたわら油絵画家として制作活動を続け京都、大阪、東京で個展を開く。日本臨床美術協会認定臨床美術士2級。
2006年、京都<臨床美術>をすすめる会を結成し代表に。支援者を含め約200人の会員を抱える。08年から京都市西京区の自宅、12年から地下鉄北大路駅近く(北区)にアトリエ苗を開業し臨床美術の教室を開く。