京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●この人と話そう
摂食障害、社会復帰支える
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「当事者の会の発足で活動も一つのヤマを迎えました。どうぞ無理をしないよう続けてください」。SEEDきょうと総会であいさつ(3月16日、京都市中京区のウィングス京都) |
《どんな活動をしているのですか》
最初は通院されている当事者の家族の方を対象に、月1回の教室を開きました。勉強会と交流会を行い、半年間受講してもらったうえで希望者には、昨年3月に立ち上げた「らくの会」という家族会に入ってもらっています。
摂食障害の当事者は集団が苦手なので、家族の組織を優先したのですが、家族の方から要望も出て、この4月に当事者の会も発足が決まりました。体験を話し合い分かち合うトークと、物づくりに取り組むワークが活動の2本柱になります。
はじめはSEEDきょうとスタッフが治療に関わっている当事者を中心に、20人程度の登録を見込んでいます。軌道に乗れば、広く参加者を募る予定です。経済的にも安定してくれば、常設の施設を作りたいです。
《摂食障害になるのはどういう人ですか》
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《摂食障害の人は何人ほどいるのですか》
病院に来てない人も多いので実数はわかりませんが、治療を受けている人は京都市の全医療機関で千人以上はいるのではないでしょうか。おそらくその3割は引きこもっていて、家族が面倒みていると思います。あとはアルバイトしたり学校に通ったり…。しっかり就労できている人は2割程度でしょうね。
治療に時間がかかるので、専門家の数も、入院治療や相談できる場所も少ないのが全国的な課題です。軽い過食症も含めると女子大生の5人に1人は摂食障害という統計もあります。
《他の精神疾患とは違った特別の治療やケアが必要なのですか》
はい。一般社会では何でもない事でも、当事者には個別の配慮が必要です。たとえばお土産にお菓子を持ってくると、パニックになる人もいます。「元気そうだね」と気軽に言うと、この病気の人は「太った」ととらえてショックを受けることがあります。
当事者にはいろいろな面で能力が高い人が多く、一部の人は一方的に指示されるのを嫌がります。ところが一般の施設で作業していて、きついことを言われても本音は言わずにその場は笑っていて、次の日から急に来なくなることがあるのです。慣れたスタッフのケアが大切です。
《野間さんが摂食障害に取り組むようになったのはなぜですか》
医学生時代は統合失調症に非常に興味があったのですが、医師になって1年目に数人の摂食障害当事者に出会って、非常に難しい病気だと痛感しました。既存の医学や医療だけでは解決できず、医者としてやっていく上で大きな宿題を与えられたように感じて、私なりに答えを出したいと思ったのです。もっとも、答えはまだ出ていませんが。
のま・しゅんいち
1965年、香川県生まれ。
京都大医学部を卒業し90年、医師に。ドイツ・ビュルツブルク大学精神療法医学的心理学研究所に留学。この間、摂食障害の専門施設で研修を受ける。京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座・精神医学講師。著書に「解離する生命」(みすず書房)、「ふつうに食べたい〜拒食・過食のこころとからだ」(昭和堂)など。
SEEDきょうとの連絡先はファクス075(751)3246、Eメールinfo.kedsc@gmail.com