京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●この人と話そう
成年後見、本人の思い尊重
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訪問に出向く前の朝のひとときにスタッフと談笑する。「被後見人の中で自分の意思を語れる人は少ないですが、どうしたいのかを探り、見つけるように努めています」(大津市浜大津3丁目) |
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《親族ではなく「あさがお」のような第三者が成年後見人を務めるのにはどんな意味があるのですか》
制度が始まったころは後見人の9割以上を親族が務めていましたが、今は半分に減っています。要因は親族自身の高齢化のほか、本人のことをより客観的に判断する視点が求められるようになったことです。一例を挙げると、親の財産を後見人である子が管理して出し控えするケースがありました。また、親が子の後見人になることによって、保護者の立場と後見人の立場で悩む方もおられました。
「あさがお」のような第三者が後見人となることにより、家族や親族の意見を取り入れつつも、本人の意思にできるだけ沿うような、本来の趣旨に沿った成年後見が行えるようになります。
《「あさがお」への依頼はどこから来るのですか》
本人や親族の他にはケアマネジャー、民生委員、障害関係の生活相談員、地域包括支援センター職員ら支援者です。悪質商法などで本人はだまされても気づかず、財産を奪われてしまってから周囲が気づくケースもあります。そうなる前に発見し、相談を受けられればよいのですが。
《スタッフの態勢はどうしているのですか》
相談員が私を含めて5人、事務職が4人です。相談員は、社会福祉士、精神保健福祉士、看護師といった資格を持っており、現在93人の被後見人を分担して訪問・調整などしています。事務職は主に財産管理を担当しますが、これは法人としても重大な責任を伴う業務です。ほかに、男女4人が非常勤の地域支援員として、相談員とペアで動いています。
《被後見人の生活を守る上で大切なことは何ですか》
本人の意思を大切にした活動を行うことです。本人は自分の意思を語れる人が少なく、「本人がどう思っているか、感じているか、どうしたいのか」を探りながら見つけて、「では本人のためにどうしたらいいのか」について悩み、決定し、実行に移していく、そんな丁寧な作業が大切です。また、私たち後見人は、押しつけや過保護に陥ることがないよう注意が必要です。本人の自立を阻害する「水やりの根腐れ」になっていないかどうか、常に自戒しています。
《他の人の生活に深く立ち入るわけですから困難も多いでしょうね》
「あさがお」では電話は24時間対応ですが、夜中の着信もあります。不安になった被後見人からのSOSであったり、被後見人の財産を搾取してきた親族や知人であったりします。後見開始時に債務整理などが必要な場合には法律家に依頼しますが、返済していく場合は計画を立てて、相手方と交渉しますので時間がかかります。
《滋賀県には大津市以外にも同種の団体はありますか》
地域ごとに動きは出てきています。ただ大切なことは施設を作ることより、その地域で何が課題で、どういう仕組みが必要なのかということを関係者が十分に議論すること、あとは携わる人の使命感でしょうか。今全国でも権利擁護支援団体が増えつつあります。そういうところがゆるやかにつながりつつ、ともに社会に働きかけることのできるようにしていきたいですね。
おざき・ふみ
1958年、高知県生まれ。
83年、東海大文学部卒。卒業間際に出会った医療ソーシャルワーカー(MSW)に影響を受けて帰郷し、同じ道を目指す。佛教大通信教育課程で学び直し病院勤務。結婚で長野県を経て滋賀県に移り、病院でMSWとして復職。2004年、「あさがお」の設立準備に関わり、翌年、NPO法人「あさがお」設立。その後、所長に就任し、現在、同法人理事も兼務する。
「あさがお」の連絡先はTEL 077(522)0799。会員を募集中。