ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
この人と話そう

NPO法人子育て支援コミュニティー
おふぃすパワーアップ代表
丸橋 泰子さん
(2014/03/03)


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雑誌編集を手掛けるスタッフら(「おふぃすパワーアップ」事務局=京都市上京区)
《子育て支援を中軸に多彩な活動を展開されていますね》

 母親にとって子育ては大変なことです。相談相手がいない方や情報を得ることがうまくない方は一層難しくなります。そうした現状を知るにつれ、何かしたいという思いが「京都子連れパワーアップ情報」という本に結実したのです。この本は、子どもの遊び場情報や親子コースのあるスイミングプール、保育園情報、親子連れレストランなど、子連れ情報を満載したものです。1991年のことでした。当時、こうした本はなかったので反響は大きかったですね。市内のある書店の週間ベストテンに2週連続で入ったのです。その後も刊行を続け昨年12月には第14号を発行しました。

役に立つ情報を

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《その間、いろいろな特集を組まれましたね》

 京都市内を中心にした小児科特集とか、お出かけ特集とか、保育特集なんかを出しました。母親のニーズに応えた特集です。今なお売れているものも少なくありません。保育所に入所する際に選考基準があるのですが、大抵の方がご存じないのです。そうした情報も掲載し役に立てていただきました。しっかり取材をすることが基本です。そしてていねいに書きます。それが読者に伝わり支持に結びついているのかもしれません。

《子育て情報誌に携わるなか、ユニークな出版もありますね》

 この子育て情報誌を土台に生まれたのが、一つは「京都イクメン図鑑」です。これは子育てに取り組む男性の現状をリポートしたり、課題や発展方向を示唆する内容などを盛り込んでいます。もう一つは、働きたいお母さんがたくさんおられることから、母親が再就職できるための情報をまとめて提供しています。また母親が子育ての中で悩む問題の一つとして不登校問題があります。「京都発 不登校ガイドブック」はそうした方たちのために自費出版しました。その時、どうすればいいのか、どう行動すればいいのかが書いてあり、大きな反響がありました。

《京都府からの受託事業もされていますね》

 府からは女性向け就労支援施設「京都ジョブパーク マザーズジョブカフェ」(京都市南区)でママさんコンシェルジュ事業の運営を受託しています。このほかに「京都 幼稚園・保育園情報」を出すため、その取材スタッフを育成する「取材・編集講座」もやっています。雑誌発行などのスタッフは7人で、それ以外にママさんライターが30人ぐらいおられて協力していただいています。

《現代の子育てはどうあるべきとお考えですか》

 現代社会において育児は社会全体が取り組まねばならない問題の一つとなっています。核家族化や母親の孤立化などによって若い母親はともすれば、自分を見失いがちです。そこに虐待などが起こる可能性も出てくるのです。母親がいらいらして幸福でなければ、子どもが幸福なはずはありません。母親が生き生きとして生きがい、やりがいを持っていて、社会とかかわりをもっていれば、子育てもうまくいくのです。私はその架け橋的な役割を情報提供という形で担いたいですね。

スマホに対応

《将来展望はいかがでしょうか》

 とにかく、よくここまで来られたなと思います。あっという間の23年間でした。もうどうにもならなくなった時に助けてくれる方が現れるのです。何回もそういうことがありました。本当に感謝しています。そして、これからやりたいこともたくさんあるんですよ。一つは京都の魅力を盛り込んだ子連れ情報をスマートフォンにも対応した形で世界に発信していきたいですね。もう一つは母親の就労支援の本格化です。インターンシップを強化したり、就労支援について語れる講師の養成を進めたり、できれば将来、有料職業紹介もやりたいと思っています。


まるはし・やすこ
1955年大阪市生まれ。
77年武庫川女子大文学部卒。91年「京都子連れパワーアップ情報」を仲間と創刊。94年の2号から編集長。98年「おふぃすパワーアップ」を設立(2002年に「子育て支援コミュニティー おふぃすパワーアップ」と改称しNPO法人化)し代表に就任。00年に「京都発 不登校ガイドブック」を発行。02年京都府のあけぼの賞を団体として受賞。男性側の育児に着目した「京都イクメン図鑑」など発行。

取材を終えて
 話さなくても優しさと温かさを感じ取れる。敢然と立ち向かうというのではなく、自然体で新たな地平を開拓していく。常に前を向く人なのだろう。一つ一つの積み重ねと出会いの不思議を大切にする。好きな言葉は「感謝出来る人間が一番強い」である。(田中敏夫)