ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
HOPE 乳がんとの闘い

一人じゃないあたたかさ(2015/10/19)



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リレーフォーライフジャパン京都プレイベントで仲間とともに歩く櫻井さん(右)

 がんになったからこそ出会えた方々がいます。医療関係者の方々、患者仲間、ボランティア仲間など背景は違っても、「がん」をキーワードに多くのご縁をいただきました。それは私と家族にとって、とても心強いことでした。

 身近で寄り添って下さるお友達や病院のがん支援室の方、ボランティア仲間など出会いの場は広くありますが、その中でもがん友さん(がん患者のお友達)の存在は、思いや体のつらさの体験共有など気兼ねなく話せる良き相談相手であり、お互いの応援団のような存在です。

 一人でいろいろなことを背負っておられる方は、ぜひ一度お近くのがん相談窓口や患者会などに参加してみて下さい。また、眠れぬ夜は「いのちの電話」などの24時間対応の電話相談で気持ちを聞いてもらってはいかがでしょうか。

 患者や家族は、思ってもみなかったがん罹患(りかん)にともない、身体的、精神的、社会的痛みなどに向き合わなければいけません。死への恐怖や不安、生きる目的や、人生の振り返り、仕事や経済的なことなど、自分一人で混沌(こんとん)とした思いを少しずつ整理していくことは大変なエネルギーがいります。私はさまざまな思いを言葉に置き換えて整理するのに8カ月近くかかりました。混乱をしている時に、混乱のまま、そっと側で耳を傾けてくれる人がいることで、からまった糸の先を早く見つけることができるように思います。

 そして、私はリレーフォーライフやがんピアサポートの活動の中で多くのがん友さんと出会い、お一人お一人の生き方・逝き方に、大きな影響を受けました。「笑いのない人生はあかん」と、いつも爽やかな笑顔でおられたYさん。ご自身の美学である入院したらお見舞いにこないでという思いを尊重し、会いに伺えない私たちの気持ちを察して、ご夫婦の笑顔の写真を送って下さいました。仲間への深い気遣いと優しさは今でも私の憧れで目標です。

 そして、リレーフォーライフ京都の中で一緒にボランティアをしたKちゃんとTちゃん。Kちゃんは、入院中にラジオ番組「みんなでリレーフォーライフ」に電話出演されて、「がん啓発は継続が大切」と話をしてくれました。その2週間後に旅立たれました。「生きたい。絶対に生きてやる」とKちゃんは、生きて生きて生き抜き、いのちの大切さ、あきらめないことの大切さを教えてくれました。Kちゃんが参加したかった小松島と岡崎のリレーフォーライフ。必ず一緒に行こうね。

 それからTちゃん。子ども同士が高校のクラスメートでした。「僕のお母さんも乳がんやねん」と子ども同士で話をしたことを息子から聞いて、お手紙を書いたのがママ友にもなる始まりでした。症状が厳しい時も、いつも穏やかにほほ笑んでグチの一つも言わない方で、しっかりとご自分の病状を把握されていました。治療と仕事を最後まで両立され、入院中はしみじみと深い話をしました。かけがえのない大切な方々が、命をかけて教えて下さった尊い学び。彼岸でお会いしたときに「私も生き切ったよ」と笑顔で言えるように一日一日を大切に生きていきたいと思います。

 最後に、家族をはじめ私たちがん患者を支え応援して下さっている皆様に心より感謝申し上げます。一人じゃないあたたかさ。希望と笑顔が生まれ続ける社会であることを心から願っています。

(櫻井さんの連載は今回で終わります。11月からは第3日曜に田中一史さんの「兄弟として 支援者として」をお届けします)

さくらい・ゆうこ
1958年、大阪府出身。2010年に乳がん告知を受け現在も闘病中。11年リレーフォーライフ(RFL)京都設立。12年アメリカ対がん協会インターナショナルヒーローズ・オブ・ホープ認定。Imaiki Cafe「わたぼうし」副代表・RFL京都・ピアサポーター活動中。亀岡市在住。