ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
聞こえないからチャレンジ人生

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

映画に字幕と副音声
障害ある人の娯楽を手助け

深田 麗美


 大学卒業後しばらくは、障がい学生支援に関する活動を主に続けていましたが、やがてメンバーの学生は卒業。各大学でもサポート態勢が整えられ、京都リップルの活動はいったんやめようかと考えていました。

 そんな中、母が耳の聞こえない人のためにビデオに字幕を付けたり、目の見えない人のために録音図書をつくるボランティアをしていた関係で、バリアフリー映画の話が持ち上がりました。日本語字幕や副音声をつけることで、聴覚・視覚障がい者が家族や友人と共に楽しむ上映会です。京都リップルのメンバーも手伝うと言ってくれたことで、社会全体へ目を向け、障害についての理解を深める活動へと広がっていきました。障害のあるなしにかかわらず共に学べ、共に暮らせる社会を目指し、現在ではメンバーのほとんどは社会人です。

バリアフリー上映の客席。白杖の人、盲導犬を連れた人など、いろいろな障害のある人が鑑賞に訪れる(2010年5月、京都市中京区のハートピア京都)
 京都リップルの主な活動は、映画の字幕・副音声付きバリアフリー上映の企画・運営になりました。四条烏丸の京都シネマ(京都市下京区)という映画館で、数カ月に一度ロードショー公開の映画に字幕・副音声を付けて上映させていただいたり、ハートピア京都(中京区)でのハートフルシネマも定期的に開催しています。

 上映前に聞こえない・見えないメンバーからバリアフリー上映の必要性について訴えるスピーチも行っています。障がい者自身から発信することで、一般の人に障害のある人を身近に感じていただき、障害のある人とない人との間にあるバリアーをなくすことにつながるのではと考えています。

 京都リップルでは、今までに120本以上の作品に字幕や副音声を付けています。字幕や副音声を制作する団体が少ないため、岡山県や和歌山県、北海道函館市などにも出掛けて上映に協力し、また各地で字幕・副音声制作の講習も続けています。

 私は普段、口の動きを読んで補聴器で声も聞いて話を理解しています。声だけでは会話の内容は分かりません。映画やテレビ番組は字幕がないと、何を話しているのか理解できません。「話せる=聞こえる」ではないのです。

 交通事故や病気などで中途失聴・中途失明した人の中には、聞こえていた・見えていた時に好きだった映画鑑賞を諦めているという方が多いです。見えない人のために、場面の様子や情景を声で説明するのが副音声です。

 視覚障害のある人にとって、黙って見つめ合っている場面など、台詞や音のないシーンは想像のしようがないのです。場内で笑いが起こっても、何がおかしいのか分かりません。こういう時に見えない人は置いてきぼりになります。

 バリアフリー上映の会場では、「10年ぶりに映画を見ました。映像がカラーで目に浮かんだ」と涙を流して喜んで下さる方や、「聞こえなくなり諦めていたが、字幕があるので楽しめた」と上映後にお礼を言いに来て下さる方もいらっしゃいます。

 見えない、あるいは聞こえない人は娯楽が少なくなりがちです。そうした人たちが喜んで下さるのが、京都リップルのメンバーにとっては大きな励みとなり、活動を続ける原動力ともなっています。


ふかだ・れみ 1980年生まれ、京都市出身。生後すぐ髄膜炎にかかり、その後聴覚を失う。静岡県の「母と子の教室」に通い発音や発声、口話を学ぶ。京都府立山城高から同志社大経済学部に進み、在学中の2003年にボランティア団体「京都リップル」を立ち上げた。現在、同大学経理課勤務のかたわら、京都リップル代表として映画のバリアフリー上映に参画。障害当事者として講演活動も行っている。