ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
来た道 行く道

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。


真の共生社会目指し奮闘

「ワークチャレンジスタイル GOKENDO」事業長
松浦 一樹さん


新たな分野にチャレンジする松浦さん<左>
(京都市伏見区の事業所)
 将来どうすればいいのかと迷っていた予備校時代、少年院の教官に支えられ、非行少年が立ち直ろうとする姿を描いたビデオを見て感動したのがこの分野に関心を持つきっかけでした。大学で社会福祉を学び、偶然出会った警察署少年課の係長さんの影響もあって警察官になったのです。やり直したいと思う少年を支えていきたいという願いがかない、少年担当刑事になることができました。

 ある事件で知的障害のある青年と知り合い、その方が働く作業所とかかわるにつれ、この福祉作業所で新しい青少年健全育成の形を作りたいと強く思うようになったのです。これを契機に15年前に警察官を退職し、知的障害者の福祉施設に身を移しました。そこで福祉施設の運営が本当に障害者のためになっているのかなどさまざまな疑問や矛盾も知りました。課題やハンディがあっても頑張りたいと願う方たちがステップアップできる場を作らねばと、平成19年4月に仲間3人とともにNPO法人「ENDEAVOR JAPAN」(障害者就労支援事業所)を立ち上げた訳です。

 現在は就労継続支援事業の限界を打ち破る試みを京都府の福祉行政担当者や各企業の関係者らの理解と協力によって進めています。現状に満足せず、もっと効率よく働きたい、もっと給料を高くしたいと願う障害者の方が次々と出てきています。とてもうれしいことです。そして能力に磨きをかけた人は企業就職へと進むのです。

 今、リネンサプライ会社の仕事と配送会社「五健堂」グループでの容器仕分け作業を主にしていますが、現在37人の方が意欲をもって働いてくれています。4月1日には五健堂さんの協力で新たな事業所「ワークチャレンジスタイル GOKENDO」がオープンしました。ここでは10万円以上の給料を得ることや関連企業に就職するチャンスがあります。福祉の枠組みを超えて知的障害者だけでなく非行少年や引きこもり青年らも一緒に働ける場、支え合う場にできればと思うのです。このように福祉・企業・地域・行政が連携した働く場をもっと地域に、企業に広げていきたいですね。

 私が今日あるのも多くの人の出会いと励ましがあったからこそのことです。そしてこれからも多くの人に支えていただきながら、また一歩を踏み出していきます。それぞれの個性や自主性を尊重しながら自立に向けて支援するためには何が大切なのかという観点をしっかりもって、頑張っている人が報われる真の共生社会を実現するために奮闘したいと思います。



まつうら・かずき
1968年堺市生まれ。92年佛教大社会学部社会福祉学科卒業し京都府警察官。99年退職し福祉施設勤務。2006年NPO法人「ENDEAVOR JAPAN」を設立し統括事業長に就任。14年4月ワークチャレンジスタイルGOKENDO事業長に就任。45歳。