ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
来た道 行く道

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。


交流、希望の場作り尽力

八王子保育園園長 長谷川 郁子さん


ナイジェリアからやってきた子どもを抱く長谷川さん
 私のおじが近江兄弟社の創立者の一人でした。その関係で10歳まで中国の奉天の支社におり、戦後、引き上げて来て近江八幡に住みましたが、学校も近江兄弟社で、ヴォーリズの妻の満喜子さんの薫陶も受けました。そうした影響で早くから福祉に携わりたいと思っていました。東京の大学で社会福祉を学び、牧師の妻となって富山に赴任し、そこで保育園長をしたのです。大変でしたが、毎日子どもと接することができてほんとうに幸せでした。

 そのあと、京都市内のとある病院のメディカルケースワーカーとして働きました。誰もお見舞いに来ないお年寄りが大勢おられました。厳しい環境で、さぞ辛かったと思います。そうしたお年寄りを元気づけることが私の生きがいにもなっていました。欧州や米国の老人施設を見学する機会に恵まれた際、海外の施設のお年寄りがおしゃれを楽しみ、人生を楽しんでいる姿を見て日本も早くこうならなければと強く感じたものです。

 それからしばらくして近江八幡市の保育園を運営してくれないかというお話が舞い込んだのです。園舎は荒れ果てていて、ためらいもありましたが、恵まれた自然環境を生かして運営しようと決意したのです。保安林の解除のため防災工事が必要になるなど、いろいろ問題がありましたが、地域の皆さまのご協力によって何とか乗り越えてようやく6年後に新園舎が完成しました。

 念願だった老人施設(デイサービスセンター)は1995年春にできました。隣接の土地を地元の方が寄付してくださったのが縁です。「むべの里」と名付けました。デイサービスとして1日30人を受け入れています。お年寄りと園児の自然な交流ができています。毎朝、園児がお年寄りを玄関でお迎えしたり、昼食を一緒に楽しんだり、園児が散歩の際に取って来た花をプレゼントしたり、お年寄りの昔の話を聞いたりと楽しく交流してます。「小羊会」では障害者を雇用してきていますが、それぞれほんとうに頑張ってくれています。

 来年4月、近江八幡市内に幼保一元化の「こども園」を開園します。楽しみですね。でも私は事業を拡大したいという気持ちはまるでないのです。ご縁でしょうね。信頼してもらえる施設運営、恵まれた自然環境のなかで希望をふくらます場を提供したいと思いますし、常に愛情をもって接したいと考えています。「信・望・愛」がこの小羊会の理念です。事業運営は資金的にも大変なんですが、子どもやお年寄りと接する喜びが私を支えてくれています。一人一人の笑顔が輝くようこれからも頑張っていきたいものです。



はせがわ いくこ
1935年中国・奉天市生まれ。
57年明治学院大学卒業。富山市で7年間保育園長。その後、京都市内の病院でメディカルケースワーカー。81年に近江八幡市の八王子保育園園長に就任、現在に至る。86年に社会福祉法人「小羊会」設立。「小羊会」は現在、保育施設2カ所、介護施設5カ所を運営している。78歳。