ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
来た道 行く道

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。


地域の介護へ積極性を

公益社団法人「認知症の人と家族の会」
京都府支部代表 荒牧 敦子さん


電話相談員と語り合う「認知症の人と家族の会」京都府支部代表の荒牧敦子さん(左)
 認知症は単なるもの忘れではありません。知的な面で日常生活に支障を来たす慢性の病気だということを知ってほしいですね。周りの人が本人の変化、例えば時間が分からない、人柄が変わる、不安感が強くなるなどに気づくことが重要です。介護する方はそういうことを理解して上手におつきあいすることが大切です。

 高齢化社会が進み認知症になられる方は増えています。この会は家族が認知症になった際に、ともに助け合うことで安心して暮らせる社会の実現を目指すものです。苦しんでいるのは自分だけではないことが分かると力を得ることが出来ます。全国組織として1980年に結成されたのですが、発祥の地は京都です。京都府支部は本部の発足と同時に結成されました。

 私はしゅうとめの介護をはじめ、私の実家である京丹波町の父や母の介護をしてきたのですが、みとってのち、時間が出来たことからこの会の京都府支部に入って活動を始めました。これまでの介護体験を生かして、今困っている人の少しでも支えになればというのが動機でした。活動を始めて大きな達成感がありました。苦しんでいるのは自分だけではないと思ってもらい、共感できたからです。支部では、認知症にかんする電話相談を週5日間やっており、会員らの交流の場として会報を出したり、交流会もよく開いています。私も電話相談員や会報出版のお手伝いをしてきました。そして、今から6年前に支部代表となりました。

 介護の各種サービスに対するニーズは高まる一方ですが、財政面の制約からすべてをまかなうことはできません。それをどう克服するかが大きな課題といえます。都市回帰現象などで地域では担い手不足が起こる傾向にあり、介護力の低下が心配されます。行政に全面的に頼るのではなく、自分たちのことは自分たちでやるという意識も大事で、そうした中で自分たちでもここまで出来るという積極性も必要です。

 地域の中でみんがつながって対応していくこと、どうすれば安心して暮らせるのかという視点を持つことが望まれます。本人のサービスと介護者の支援のバランスが欠かせないのです。「意志があれば、方法あり」というのが私の信条です。この支部の発展を目指す上でもっと若い人に活躍してもらいたいですね。それと私の地元で小規模な介護事業をしていますが、これも活動が続けられる限り頑張りたいと思います。9月は世界アルツハイマー月間です。これを機会に認知症について大いに関心を持っていただきたいですね。



あらまき あつこ
1940年、京都市生まれ。63年、同志社大学文学部卒業。
専業主婦として家族の介護を経験。「認知症の人と家族の会」に入会し活動。2008年5月、京都府支部代表に就任、現在に至る。京都府の地域包括ケアシステム推進プラン検討委員会委員、京都市の市民長寿すこやかプラン推進協議会委員などに就任。73歳。