ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。


苦しむ子どもに寄り添う

特定非営利活動法人チャイルドライン京都理事長
外村 まきさん


関係する報告会で語る外村さん(左から3人目)
 36年前に子どもの健やかな成育を願う「親と子の劇場」のメンバーに入ったのが、子どもとかかわる最初でした。ここで、子どもがすくすく育つには子どもを取り囲む環境がとても大切だということを学んだのです。ここで運営委員や運営委員長をして演劇鑑賞やキャンプなどをしました。

 この組織が発展的に解消して「京都子どもセンター」として発足した際に、推されて理事長に就任したのです。14年前のことです。私は看護師として働いていましたから子どもに接する機会も少なからずありました。育児に不安を持つ人や自信を持てない母親が増えてきて、子どもの成育環境も悪化しているという気持ちが段々強くなってきました。居場所のない子ども、相談できる人がいない子どもたちに接していると、「何とかしないと」という気持ちになりました。それで「チャイルドライン京都」という組織を立ち上げて苦しむ子どもの声をありのまま聞こう、寄り添おうとしたのです。

 現代の子どもたちが置かれている環境は過酷です。生きにくさや育ちにくさを感じながら毎日を過ごす子や居場所のない子どもが少なくありません。チャイルドラインは子どもからの電話相談をしているのですが、子どもの気持ちに寄り添い、自分に本気で向き合ってくれる大人の存在を知ってくれることは子どもの次の一歩につながります。子どもは自分で道を切り開く力を持っているからです。

 開設以来、多くの子どもたちが電話してきます。年間に6000件もの相談があります。内容はさまざまですが、話を真剣に聞いてもらえてうれしかったという感想が多いですね。「自分も生きてええんや」という感想を言ってくれた子どももいます。

 私は小さい頃に親を亡くした際に隣近所のおばさんらにすごく支えてもらった体験がありますが、これが活動を続ける原点かもしれません。「チャイルドライン京都」は財政的にも厳しいですが、何とか頑張っています。資金があれば、人材があればもっと活動を広げられるのにと思うことがあります。

 拠点は今、京都市内と京田辺市にありますが、府北部にも置きたいですね。それに大学、大学生との連携も進めていきたいものです。若い頃から子どもたちに目を向ける、子どもたちの心の声を聞くのはいいことだと思います。いつまでも子どもたちに温かい目を注ぎたいし、寄り添っていきたいと願っています。



とのむら まき
1947年、高知県生まれ。
京都で看護師として働くかたわら子どもの健全な育成にかかわる団体メンバーとして活動。2000年に京都子どもセンター設立にかかわり、理事長に就任。11年にはチャイルドライン京都を設立、事務局長に就任。14年に理事長に就任。67歳。