ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。


大家族のように過ごす場を

京都女子大学OG発達支援研究所所長
高木 徳子さん



自閉症について「もっと気楽に過ごせるつくろぎの場がほしいですね」と語る高木さん(京都市北区)
 自閉症の人とともに歩んでもう50年です。大学卒業後、知的障害者や自閉症児と向き合うことになりました。自閉症の一般的な行動の特徴は、他人との人間関係を樹立することに困難を伴い、それは生後極めて早い時期から認められます。それに伴う行動の特徴としては、落ち着きがない、変化を好まないことなどがあります。

 大学で自閉症の研究を進める一方、多くの自閉症の親子への指導や助言をしたり、学生に対して障害児・者への関わり方の指導をしたりしてきました。寄り添って何度も辛抱強く学習させることが大事ですし、自閉症は改善出来るのです。

 大学を退職してから自宅に京都女子大学OG発達支援研究所を設けたのですが、その際、大学で自閉症児の支援をしていた卒業生がずっと活動に協力してくれて現在があります。もちろん、研究所では児童に対して個別に指導・助言します。また月に三回、成人した自閉症者、十数人に対し社会適応訓練として京都市北区の公共施設で一緒に時を過ごします。お弁当を買いに行って「こうすれば、スムーズに行くよ」という風に教えるのです。ほかにリズム体操をしたり、ゲームをしたりします。自閉症の人が私を頼ってくれるのがうれしいのです。

 研究者としてこうしたことをやるのは、ある意味で異端かもしれません。でもある賞を頂いたのは自閉症児・者とともに歩んできたことが評価されたのだと思います。1981年から10年間、京都新聞社会福祉事業団の自閉症児のためのキャンプ副長を務めたのもいい思い出です。今はもう高齢ですから一緒に遠くへ出掛けるのは難しくなりましたが、この研究所が主体となって11月16日に京都女子大体育館で自閉症啓発活動を行います。講演会ではなくて気軽に自閉症児・者と交流してもらう内容です。一般の方々に理解と関心を深めてもらえればと思います。

 私は自閉症児・者が好きなんですね。理屈ではないのです。一緒にいたい、ともに楽しみたいと心から思うのです。ご両親が亡くなった自閉症の成人がおられます。その人たちの支援施設があればと思います。もっと気楽に自閉症の方が過ごせるくつろぎの場もほしいですね。空き家を借りてそこで自閉症の人、一般の人、お医者さんらが一緒に住むグループホーム的、大家族的なものを作りたいのですが、経済的になかなか大変なので、夢に終わっています。誰かが実現していただければと願います。



たかぎ のりこ
1961年、京都女子大卒業。同家政学部教務員、助教授などをへて97年に家政学研究科教授(児童学専攻)。2003年に職し、京都女子大学OG発達支援研究所を設立し、独自の活動で自閉症の人の支援を続けている。「自閉症児の年齢別指導法」「自閉症児・者の社会適応指導法」などの著書がある。76歳。