ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

障害児療育をリードする
悩み理解ふれ合いこそ

友久 久雄 龍谷大名誉教授




教え子の学生と語り合う友久さん=中央(京都市右京区の花園大学)
 今もさまざまな活動を続けています。ひとつは龍谷大学の「大人と子どもの心のクリニック」で、大人の相談とともに子どもの遊戯療法や保護者からの発達相談を受けています。

 二つめは保育所に直接行って保育士さんを対象に、障害児保育をどう展開していくかという巡回指導を京都市と城陽市で行っています。また龍谷大と花園大ではカウンセリングや精神医学の講義も担当しています。もちろん京大病院では小児(精神)科外来の診療もあります。

 このほか、毎年夏には不登校児を対象とした7泊8日の「サバイバルキャンプ」をやっています。自然の中で子どもは本当に元気になり自分に自信を持つようになります。もう始めて20年以上です。

 また特別養護老人ホーム・ビハーラ本願寺では、精神科医としてだけでなく、子どものおもちゃライブラリーを担当し、幼児と老人の人間関係やコミュニケーションのあり方も研究しています。

 大学卒業後、一時、重症心身障害児の施設で医長をしたあと、京都教育大から招かれて養護学校教員の養成に励むことになりました。というのは、昭和54年度に養護学校義務制という制度ができたからでした。しかし当時は、それを担当する先生がまだ育っていませんでした。そこで全国の教育大学で養護学校の先生の養成が始まったのです。障害児教育は、教育と心理と医学という三本柱で成り立っており、その医学分野の担当というわけです。

 この間、自閉症児や不登校児、発達障害児を中心に研究を続け、現場の先生や学生向けにカウンセリングや指導法などの本も書きました。

 障害児のことを本当に理解しようとすれば、現場に行きふれ合わなければなりません。そうしてこそ障害児の願いや親の悩みが理解できるのです。そういう見地から私は現場に学生を連れて行くのを常としています。現場から学ぶことは本当に大切なことなのです。

 行政はもっともっと現場に足を運び障害児・者の心に丁寧に寄り添ってほしいですね。障害児と親の立場に立つ視点がほしいのです。それに最近、出生前診断が活発となっていますが、胎児に障害が見つかった場合、拒否的にならないで、前向きにどう受け入れていくかの心がまえをするようにしていただきたいですね。

 これからも元気である限り、子どもや親とともに頑張っていきたいですね。また、心ある学生を指導し育成していきたいとも思っています。



ともひさ ひさお
1942年姫路市生まれ。
67年神戸医大卒。72年神戸大精神神経科をへて74年京都教育大助教授。87年同教授。2002年同名誉教授、龍谷大教授。14年退官、同名誉教授。著書に「学校カウンセリング入門」「自閉性障害と教育効果に関する研究」「仏教とカウンセリング」「臨床心理実習マニュアル」「生きかた死にかた」など。