ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

あるがままを受け入れて

ゆりかご保育園主任保育士
川島 由里子さん




子育てサロンに集う母親と幼児ら(京都市南区)
 「ゆりかご保育園」の前身は「妙心寺保育園」といって1950年春に開設され、その2年後に社会福祉法人となって現在の園名になりました。今、園児は170人いて、30人余りのスタッフで運営しています。

 私は埼玉県に生まれ育ち、大学は京都でした。実は私の実家も保育園を運営していたのですが、当時はさほど関心はなかったのです。卒業後は埼玉県の病院内の臨床心理室に勤務したり、別のところで自閉症児のセラピストをしたりしていました。嫁ぎ先が今、ここの園長をしている主人でした。

 資格を取って週に何回か保育園運営を手伝うようになり、77年からはフルタイムでやるようになりました。当時、障害を持ったお子さんを受け入れる保育園は非常に少なかったのですが、私が来る前からここは1人か2人受け入れていました。

 京都市の障害児保育研究園の指定を受けたりもしました。こうした流れの中で「京都市障害児保育を進める会」が結成され、その副会長となって活動しました。少し経って市に障害児保育を支える制度もできました。

 当時、私が担当したクラスには自閉症の子ら6人の障害のある子が入りました。全部で30人ぐらいのクラスでしたが、まったく大変だとは思いませんでした。普通の子も障害のある子も一生懸命です。お互い人間だよね。あるがままを受け入れて助け合って行こうね。一緒に生きて行こうね。そんなふうにしてやってきました。

 ある年でしたが、かなりの障害を抱えた子が入った時でした。「先生、なんか…」と言って最初は近づけなかった他の子が次第にその子を理解して寄り添って、そしてこう言いました。「先生、あの子、とってもかわいい」。うれしかったですね。

 普通の子と障害のある子とを一緒に保育することで両方が育つのです。障害のある子はいろんなものを吸収し、いろんなことができるようになります。普通の子も障害のある子とのコミュニケーションから「一番でなくていいんや。それぞれがありのままの自分で頑張ればいいんや」と理解するのです。一緒にいることで生き方や暮らし方、人のあり方を学びます。この春も障害のある子を受け入れました。みな頑張っています。あるがままをそのまま受け入れることが大事なのです。

 園長の夫とともに二人三脚で保育に携わってもう40年になります。どの子もどの子もとてもかわいいですね。それぞれの子が認められ愛されること、そして愛することが大切です。保育園に来るのが楽しい、毎日生きているのが楽しいと思えるような、そういう保育園であり続けたいと思っています。


かわしま・ゆりこ
1946年埼玉県生まれ。69年花園大文学部社会福祉学科卒業。毛呂病院(埼玉県)臨床心理室勤務。結婚して京都に。74年から京都市右京区の妙心寺塔頭・智勝院内の「ゆりかご保育園」(川島晋海園長)で保育に従事。