ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

役に立ちたい、その一心で

点訳ボランティアサークル「点友会」
会長 石津 利幸さん




会員と語り合う石津会長(前列左から3人目、京都市北区)
 10代後半の時に点訳通信教育を1年間受けました。動機は私自身が強度の近視で、目の不自由な方の役に立ちたいという気持ちが強くあったからです。そこから仲間づくりに乗り出し、8人で「点友会」を結成したのです。当時の会費は月額20円でした。

 それからは点訳するのに夢中でした。勤めのかたわら毎日何時間も点訳しました。目の不自由な方たちに喜んでもらいたいという気持ちがすごくありましたから。それから50年以上、点訳ボランティアを続けています。少しずつ、少しずつと思いながら今日を迎えたわけです。その間、機関紙「てんゆう」も発行してきました。当時は謄写印刷で一枚一枚ローラーで刷ってインクまみれになったのもなつかしい思い出です。

 今は仕事を退職して毎日8時間ぐらい点訳しています。会員は女性を中心に?人いますが、皆さん1日5時間ぐらいやっていただいています。「目の不自由な方にさまざまな情報を」と心の底から思えたことが長続きの背景にあったと考えます。

 点友会の50余年の歴史を振り返ってみますと、発足後から多くの方に関心をもっていただき、会員は急増し5年目には330人となり、平均年齢23歳という若さでした。だれもが意欲に燃えていました。全国に点訳ボランティアは数多くおられたのですが、情報交換する場がなかったこともあり、関西、福島、関東、東海支部などが次々に出来ました。

 70年代前半ごろには少し活動がマンネリ化し、会員が40人台に減ったこともあります。多くの自治体や関係福祉団体などが点訳に乗り出されたこと、医療の発展向上で目の不自由な方が減少してきたこともあります。それでも活動を粘り強く続けてきました。

 ボランティア活動の主な柱はまず点訳です。昨年度の点訳実績は童話、時代小説、哲学書、マンガ、京都紀行にかんする本など35タイトル、117巻、1万5千4百ページに及びました。それと拡大写本があります。主に弱視者の児童・生徒用の本です。もう一つの柱は拡大地図で教育用の世界地図や日本地図です。地図では教科書出版社と提携して小中学生の社会科地図を出して評判を呼びました。今も発行し続けています。またJR全駅を紹介する鉄道関係の週刊誌60冊を全部点訳して全国で大きな話題になりました。

 これからも体の続く限り点訳ボランティアをやっていきたいですね。目の不自由な方に少しでも役に立ちたい、それだけなんです。謙虚な気持ちで粘り強く活動していきたいと思います。


いしづ・としゆき
1942年5月、愛知県生まれ。19歳で京都市内の大手企業に就職。62年8月に点訳ボランティアサークル「点友会」を結成。代表に就任、後会長に。本格的な点訳活動を展開。機関紙「てんゆう」発行。2012年に点友会結成50周年を迎えた。亀岡市在住。73歳。