ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

ひとりぼっちにさせない

京都府視覚障害者協会会長 田尻 彰さん




協会職員と談笑する田尻彰会長=左から2人目(京都市北区・京都ライトハウス)
 幼児期に網膜色素変性症にかかり、大人になるにしたがってほとんど見えなくなりました。そのため長崎県立盲学校で学び、職業教育を受け、父の勧めもあってマッサージ師や鍼灸(しんきゅう)師の資格を取りました。将来、生きるのに困らないようにという親心だったのでしょう。

 成人式に出た当時の私は希望も何もなかったですね。でも生来のんきで楽天家のところがあって絶対にへたばらないぞと思ったものです。大学に行きたかったので親の許しを得て、先輩のつてを頼って点字受験できる大学がある京都に来たのです。

 京都府立盲学校で勉強して佛教大学に入りました。1年の夏に父が亡くなって大変でしたが、マッサージ師などの資格があったのでアルバイトをしながら卒業しました。診療所のマッサージ師をしたあと、京都ライトハウス内で生活指導員などをしました。同ハウスには長くお世話になり、その後は京都視覚障害者支援センターの施設長としてやってきました。現場を知ること、対話を重視することを大切にしてきました。これが仕事を進める上での私の基本姿勢です。

 京都府内には約1万1千人の視覚障害者がいます。協会には約1200人が会員になっており、ボランティアの養成や各種啓発事業や講習会、交流活動、就労環境の整備など多くの事業に取り組んでいます。地域別に支部も設けているほか、文化部やスポーツ部などもあり、視覚障害者の生活を豊かにする一助と考えています。

 こうした活動の基本にあるのは「ひとりぼっちの視覚障害者をなくそう」という思いです。これは私たちの合言葉になっています。ながく協会の副会長をしてきました。副会長時代には全国の視覚障害者約2千人が集う全国大会を京都で3日間開催したのですが、非常に思い出深いですね。全力で取り組みました。

 最近、縁あって会長を引き受けたのですが、視覚障害者の願いや希望をかなえるには、当協会が要望活動を行う運動団体であるということを忘れてはならないし、これを基本にすえねばなりません。今日の京都の視覚障害者対策がここまで達したのも諸先輩の運動、尽力のおかげだと思うのです。

 視覚障害の若い方には決して希望を捨てず目標を見つけ希望をもって進んでほしいと思います。一般府市民の方には視覚障害者に対する一層の理解と協力をお願いできたらと思います。これからも「行動する会長」として全力で要望実現の運動にあたりたいと思います。また社会的弱者にやさしい街づくりを目指してまだまだ頑張りたいと考えています。


たじり あきら
1947年7月、長崎県生まれ。76年佛教大学社会学部社会福祉学科卒業。京都市内の診療所勤務をへて2009年まで京都ライトハウス勤務。その後京都視覚障害者支援センター勤務。府盲人協会事務局長、公益社団法人・府視覚障害者協会副会長などを務めた。