ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

傾聴に人間性をかける

社会福祉法人 京都いのちの電話常務理事
平田眞貴子さん




相談員認定式であいさつする平田さん
 「いのちの電話」は、悩みを持つ多くの人の相談相手になり自殺などを防ごうと国境を越えて生まれた運動です。1950年代に英国で生まれました。日本では70年代初めに東京で初めて設立され、その後各地で設立されてきました。

 もうだいぶ前になりますが、育児に悩んでいた時期があり、カウンセリングを学ぼうと、大阪市内のカウンセリング専門学校に3年間通いました。その後も同市内の社会福祉法人が運営するカウンセリングルームで面接相談や子どもの遊戯治療などを12年間やってきました。ありとあらゆる悩みと出会ったといえます。一度相談に来た方がしばらくして自ら命を絶ったと知り大きな衝撃を受けたこともあります。

 そんな時に大阪で「関西いのちの電話」を設立しようという動きが出て、カウンセラーを続けながらかかわったのです。その後、京都市内に引っ越してからのことですが、京都で運動する人たちで『京都いのちの電話』を作ろうということになったのです。設立から事務局長を退任するまで日々の活動はもちろん「自殺予防シンポ」や「相談員全国研修」、講演会開催などを多くの方々の支援でやってきました。資金集めや相談員養成などにも全力で取り組んできたつもりです。

 「いのちの電話」は24時間年中無休です。京都では約140人のボランティア相談員が支えて「眠らぬダイヤル」を守っています。

 2014年度の「京都いのちの電話」の受信件数は約2万4千件でした。うち自殺傾向の電話相談は1割以上あり、約3千件でした。40代以降の相談が多く、特に高齢者の相談が増加傾向にあります。

 相談員にとって大事なのは電話をかけてきた人の心に寄り添い、その人の悩みや葛藤を親身になって聞けることが大事なのです。説教しようとか励まそうとか思ってはいけないのです。「もうすぐ電車に飛び込みます」「リストカットで血が噴き出てる」などの電話ではこちらの人間性をかけて話す以外ないですね。魂のぶつかり合いかもしれません。ボランティア相談員が落ち込んだりショックを受けたりした時にケアするのもベテラン相談員の役目です。

 長年電話相談を受けてきて今の世の中はほんとうに生きづらくなったなと思います。悩みを抱えていても誰にも相談できない人が多いのです。心のふれ合いが少なくなってきていると思います。

 相談者がどんどん増えており電話がかからないことが多いので、これからはもっと相談体制を充実したいと思います。ですから「ボランティア相談員になってください」と呼びかけたいのです。


ひらた・まきこ
1935年岡山県生まれ。
主婦として「関西いのちの電話」設立に参加。京都での「京都いのちの電話」設立運動に参加、電話相談や相談員の養成・研修に従事。85年から2013年3月まで事務局長、02年から常務理事。