京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
|
●来た道 行く道
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 患者と家族 チームで支援認知症専門医 藤本 直規さん
子どものころは体が弱かったので、地元のかかりつけ医に往診してもらったりしていました。その姿を見て医者になろうと思いました。大学では神経内科の医局に入りました。勤務していた滋賀県立成人病センターで認知症患者に接し、一般病院としては初めて、認知症を専門とする「もの忘れ外来」(老年神経内科)をつくりました。当時は、認知症に対して薬はなく、医療の役割もまだはっきりしていませんでした。さらに介護保険制度はありません。65歳未満で発症する若年認知症の患者に対して、診断後の対応に苦労しました。新たな医療をつくらなければとの思いでいっぱいでした。ここから認知症へ深く関わっていきます。 始めたころは社会的に認知症への認識が乏しく、診断がうまく行われていませんでした。再診断すると、合併症があったりしました。診断の結果はその後のケアに大きく影響します。ですから、きちっとした診断は大事になります。 「もの忘れ外来」で患者や家族の声を聞いていて、この人たちを支えるには、看護師、ソーシャルワーカー、栄養士などと一緒に取り組む必要性を感じ、開業することになりました。この時の「支えることができる部分はたくさんあるはず」との思いが今のベースになっています。その後、内容は何倍にも進化させています。 開業して、介護・ケアの力のすごさを知りました。介護の現場とのつながりの必要性を一層感じました。認知症の治療には、患者、家族とともに医療、介護、行政、地域などとの連携が欠かせません。就労支援では、会社と話し合って、職場を変えてもらうなど、仕事が続けられるようにお願いしています。デイサービス「もの忘れカフェ」を行っていますが、こちらからプログラムを提示するのではなく、患者本人に内容を決めてもらうようにしています。自分たちの意思で行動し、社会参加したいという患者の思いに沿うようにしています。40、50代の人も含め三十数人が来ています。 四半世紀に及び認知症に取り組んできました。現在、「認知症の医療と福祉の連携IN守山・野洲」では地元のかかりつけ医10人ほどが中心となり医・医連携、介護現場ではデイサービスや特養、老健施設などの介護士同士の勉強会を開いています。医療機器もよくなり、これらの活動を通して、認知症の診断・治療の精度をさらに向上させたいと思っています。医療、介護のどちらにおいても人材育成が大切になっています。そのために尽力したいです。 ふじもと・なおき 1952年岡山県倉敷市水島生まれ。78年京都大医学部卒業。90年に滋賀県立の病院に全国初の「もの忘れ外来」開設。99年守山市でクリニック開業。「認知症の医療とケア」など著書多数。
▲TOP
|