ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
来た道 行く道

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

みんなで声を上げよう


高齢社会をよくする女性の会・京都 

代表 中西 豊子さん




パソコンに向かい原稿を書く中西豊子さん(京都市中京区の自宅)
 「女性だといって、しんどい思いをさせている」との気持ちから、家父長制がまだまだ残っていた1980年代から女性問題に取り組んできました。高齢社会を迎え、国の施策などに対し、女性の視点で提言してきました。

 白生地問屋の四女として生まれました。子どものころから元気いっぱいだったので、親から「男の子だったらよかったのに」とよく言われました。ところが、後継ぎの弟が生まれ、弟ばかりがかわいがられる。このころから、私はフェミニストだったのでしょうか。高校を卒業して印刷会社の経営者に嫁ぎ、ごく普通の主婦でした。新聞の女性向け投稿欄で知り合った仲間を通じて、女性問題に強い関心を持つようになりました。女性は子育てや家族の面倒をみる家事労働に閉じ込められていました。警察官職務執行法改正や核実験に反対する活動をするようになり、周りから冗談めかして「活動主婦」と呼ばれました。

 1982年には日本で初めて女性問題の専門書店「ウィメンズブックストア松香堂(しょうかどう)」を京都市上京区で設立しました。女性が出ているミニコミ誌も集め、このころに、全国的な女性ネットワークができたように思います。後年、書店を閉めるにあたって、インターネットを通して情報発信することにしました。友人である上野千鶴子東京大大学院教授(現名誉教授)らに相談し、2009年にウェブサイト「ウィメンズアクションネットワーク(WAN)」を立ち上げました。女性のための情報を提供し、活動をつなぐ目的でした。

 WANは、認定NPO法人として運営しています。女性問題の書籍紹介をはじめ、女性学講座、法律相談、イベント案内など、女性に関わるさまざまな情報を提供しています。「ミニコミ図書館」では、1970年代から現在までの全国の女性運動ミニコミ誌を電子データ化しています。約80人のボランティアによって支えられています。私は事務局長を務め、事務局も私の自宅です。

 社会の高齢化では介護などが女性にとって大きな問題となります。1989年に「高齢社会をよくする女性の会・京都」を仲間6人でスタートさせ、介護保険制度創設へ活動しました。「介護ヘルパーが女性だから賃金が安い」ということなどは許せません。不満を愚痴らず、一人よりみんなで声を上げようと考えました。こうした活動をやらなければ、何も変わらないとの思いです。

 高齢社会で活動するために、50代後半で大学に入り、社会福祉を学びました。活動では「この指とまれ」という言葉が好きです。現在、介護保険制度見直しで軽度者へのサービスについて議論されています。「女性の視点を欠かさずに、市民の意見を聞いてほしい」と、今後の活動テーマを検討しています。


なかにし・とよこ
1933年京都市中京区生まれ。51年山城高卒業。95年佛教大社会学部卒業。
女性問題、高齢社会問題について活動。「女の本屋の物語」など著書多数。京都市中京区在住。