ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

障害者参加する地域に


NPO法人洛西福祉ネットワーク理事長

齋藤 信男さん



洛西福祉ネットワークが展開する高齢者の居場所・生きがいづくり事業「わくわくサロン」の野菜朝市で、ボランティアの人たちと話す齋藤さん(左)
 洛西ニュータウン(京都市西京区)に住んで24年になります。市内で最初の大規模計画住宅団地として1972年から建設が始まったこのまちは、ピーク時に約1万世帯・3万6千人が暮らしていました。いま、人口は2万3千人に減り、高齢化が急速に進んでいます。

 「市中心部から遠く、公共交通機関はバスだけ」。そんな立地の不利を解消するはずだった市営地下鉄の延伸計画は結局、頓挫しました。でも、嘆いてばかりはいられません。

 「安心して健康に住み続けられるまち」をどうつくるか。住民有志が集い2013年に結成したのが「洛西福祉ネットワーク」です。高齢者の居場所・生きがいづくり、家事援助サービスなどに取り組んでいます。

 私は若いころ、京都YMCAの社会奉仕活動に参加。中学校特別支援学級の同窓会が、「親なき後」のために開く合宿などを支援しました。定年後はYMCAでの経験を生かし、知的障害者のグループホームで責任者を務めたこともあります。

 洛西ニュータウンでは自治会長や住民講座の企画者として「地域の課題解決は地域で」を基本に活動してきました。

 住民の誇りでもある「自然と景観に恵まれた低層の家並み」に、突然の危機が訪れたのは?年でした。住区内で7階建てマンションの建設計画が知らされたのです。地域あげての反対運動にも業者側は譲らず、住民50人で高層部分の建設差し止めを求め提訴。最高裁まで争いましたが06年、上告棄却の結果に終わりました。

 ところが、住環境を守る私たちの行動は無駄ではありませんでした。裁判中に、住区内で建物の高さや容積率の制限強化などを求め市議会へ提出した請願が採択されたのです。

 京都市はこれを受け、まちづくりの方向を住民や有識者が協議して提言する検討会を設置。提言は06年に「洛西ニュータウンまちづくりビジョン」としてまとめられ、翌年の新景観条例施行では求めていた住区内の高さ制限強化(上限15b)なども実現しました。

 まちづくりビジュンでは不十分だった具体策を策定するため、昨年には「アクションプログラム」の検討会がつくられ、私も委員の一人として議論に参加しています。

 これからのまちづくりで必要なのは、障害のある人たちの参加だと私は考えています。住民福祉をより豊かにするためです。その意味で、今春に京都市が打ち出した介護施策の「支え合い型ヘルプサービス」(掃除や買い物代行)に着目。洛西福祉ネットワークとして指定事業所に手を上げました。「みんなが住み続けられるまち」へ、プラスアルファのサービスもできれば、と準備しています。

さいとう・のぶお
1939年、京都市生まれ。京都市内の大手メーカーに勤め生産管理業務に従事した。93年から洛西ニュータウンに移住。西竹の里タウンハウス自治会長、健康講座のNPO「竹の里いのち大学」代表などとして、地域のまちづくり活動を主導。13年からNPO法人洛西福祉ネットワーク理事長。