ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

社会とつながって生きる


京田辺市視覚障害者協会会長
内野 正光さん




「独りぼっちの視覚障害者をなくし、独りで外出できる環境を整備していきたい」と語る内野さん(京田辺市河原西久保田の、田辺はり・マッサージ治療院)
 京田辺市で鍼(はり)とマッサージの治療院を開院して30年になります。開院したてのころ、地元の社会福祉協議会の集まりに顔を出したのがきっかけで、障害者団体の活動をお手伝いするようになりました。

 京都府視覚障害者協会(京視協)の支部長を務めた後、京視協の副会長に推されて8年続け、すぐまた会長を仰せつかり連続17年も京視協の役員を務めることになりました。

 副会長時代には、老朽化した京都ライトハウス(京都市北区)の建て替えという大事業がありました。私も街頭や駅前に立って募金活動を続け、2年ほどで約7千万円の善意が集まった時は感激しました。建物は2004年に完成、私たちの総合拠点になっています。会長時代を含め自分でできたことはわずか。すべて周りの人々のお力をいただき感謝しています。

 私は奈良県の山深い農家に生まれ幼いころ、はしかの高熱で視力を失いました。県立盲学校への進学が遅れ、新1年生入学は9歳でした。懸命に点字を覚え翌年度には4年生の教室に入ることができました。

 盲学校では高等部から理療の専攻科に進み、マッサージと鍼灸(しんきゅう)師の資格を取得。奈良市内で女性専用の治療院を開き15年間続けました。結婚後、新たな生活と開業の場を求めて京田辺に来たのです。

 私が長く関わった京視協は「独りぼっちの視覚障害者をなくそう」という目標を一貫して掲げています。孤独を避け社会につながるためには「独りで外出できる環境」の整備が求められます。ガイドヘルパーや盲導犬に頼らずとも出かけられるようにしたいのです。

 必要な環境整備の一つが駅ホームの安全確保。というのも、私自身が2度もホームから転落したからです。落ちる原因は、誰しも錯覚から逃れられないため。白杖(はくじょう)で危険を探り、真っすぐ歩いたつもりが錯覚して曲がることがあるのです。

 究極の対策はホームドアの設置でしょう。鉄道事業者さんに要望し続けていますが、普及には時間が必要です。すぐにできるのは、やはり周りに声をかけてもらうこと。「危ないよ」「止まって」でよいのです。肩に手を置かせて誘導してもらえれば完璧です。

 人工知能の発達が目覚ましい今なら、ホーム上に安全誘導ロボットを置くとか、障害物の存在を知らせる赤外線めがねのような装置の開発も可能なはず。今後、各方面に検討を働きかけていきたいですね。

 孤独な視覚障害者を減らすのにはスポーツも有効です。私は視覚障害者向けの卓球「サウンドテーブルテニス」や登山に長く親しんできました。健康と仲間づくりを兼ね、閉じこもりがちの人たちをもっと誘ってあげたいと思っています。

うちの・まさみつ
1949年、奈良県・十津川村生まれ。県立奈良盲学校専攻科卒。鍼灸・マッサージ業の傍ら、京田辺市身体障害者相談員、京都府視覚障害者協会副会長、同会長などを歴任。長年の貢献で2015年、「身体障害者福祉関係功労者等」に対する京都府知事表彰を受けた。