ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

すこやか体操で健康長寿

京都福祉レクリエーション研究会代表 
川瀬 惠子さん



すこやか体操は京都市長寿すこやかセンター(下京区)が第3金曜日に開く「すこやか講座」で体験できる。同講座で体操インストラクターにレクリエーションの技を指導する川瀬さん(9月21日)
 介護予防と健康づくりの「すこやか体操」が生まれて40年以上が過ぎました。京都市内を中心に広く浸透して、指導するインストラクターも約300人に増えましたが、体操の開発に携わった者として普及はまだ道半ば、と思っています。

 すこやか体操が生まれたのは1970年代、高齢者の生活習慣が変化したのがきっかけです。居場所のない高齢者が病院に集まりサロン化する現象が続出。飲みきれない量の薬が処方されることにも批判が高まりました。

 私が住む京都市右京区では、対応策として新井多聞先生(元京都内科医会会長)らが、病院に来なくて済むよう、高齢者の新たな健康・体力づくりの方法を模索されていました。

 「ラジオ体操ではきつすぎる。数え歌の調子で、もう少し軽くて楽しめる体操を創れないか」。75年ごろ、レクリエーション講師でもあった私のところへお話がきました。

 覚えやすさを考え、わらべ歌「ひとつとや」の曲に合わせて行う体操を試作。1番のグーパーから始まり、ひざ曲げや首回し、腰伸ばし…と10番まで続き、1クール約4分の構成です。座ったまま、寝たまま、足腰が弱い人でもできる効果の高い全身運動と認められ、新井先生や保健師さんたちとグループを組み、普及活動に乗り出したのでした。

 福知山市で生まれ育った私は地元企業に就職した20歳ごろから、レクリエーションとアナウンスにひかれました。レクは友人に誘われリーダー講習会に出て面白くなり、初めは2級、後に上級の指導資格を取得。福知山市成人式の運営に参加したりしました。結婚で京都市に移った後も研修を続け、大学や専門学校で教えるようになりました。

 アナウンスは高校時代から少し経験していたのですが、88年の京都国体・全国身障者スポーツ大会で、案内や実況マイクを握る府民アナウンサーに合格。大会2年前からNHKの現役アナウンサーに指導を受ける特典を与えられ、本大会ではグランドソフトボール(視覚障害者競技)の実況を担当しました。

 アナウンス力がつくと、レクやすこやか体操の指導も効果が違ってきます。福祉行事や視覚障害者マラソンなどの競技会に進行役で招かれるようになり、市老人クラブ連合会恒例「すこやかクラブ京都大会」のように、20年近く司会をさせていただいている行事もあります。

 高齢者や障害者の方々に長く接してきて思うのは、体とともに心の健康の大切さです。寝込んだり、外部の人と関わりが少ない方も外へ出て人と接し、体と心を動かし明るい気持ちになっていただきたい。レクやすこやか体操を広め、みなさんに「楽しいな」と喜んでもらえる機会を、もっと多く提供していきたいと考えています。


かわせ・けいこ
福知山市出身。大阪成蹊女子短大卒。日本レクリエーション協会会員。グンゼ社員を経て小学校講師や龍谷大短期大学部非常勤講師などを歴任。1976年から「すこやか体操」の普及に努める一方、87年に「京都福祉レクリエーション研究会」を設立。高齢者や障害者向け各種レクリエーションの開発、指導に当たっている。