ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

困難な人支える始動者に

NPO法人「ふれあいほうむどうぞ▲
代表 小林 敬子さん



「ハイ・どうぞ」ではことし2月、ランチや喫茶の「ふしみや食堂」が1階で営業を始めた。調理を担当する夫妻と談笑する小林代表(右)=京都市中京区西ノ京小倉町
 小学校の教壇から地域福祉の道に転じて20年になります。京都市のJR二条駅周辺をエリアに、家事援助などの有償ボランティアを仲間6人で始めたのが最初。現在は三代目の活動拠点「ハイ・どうぞ」(中京区)で、子ども食堂や「絵本のひろば」などの活動を続けています。

 私が教職を辞めたのは仕事と子育てに追われて、祖母と父の介護を母に任せ何もできなかったからです。その後悔から「自分のように困った人を支える活動をすべきでは」と悩み、行き着いた先が堀田力さんの主宰する「さわやか福祉財団」の活動でした。

 「助け合い社会実現」の理念にひかれ財団の研修会などに参加。目指す活動へ自信がついたので仲間を誘い助走期間を経て1999年、二条駅西側の民家に看板を上げました。「ふれあいほうむどうぞ▲です。訪問介護や配食も手がけたのですがある日、障害のある子を持つ親しい母親から苦悩を打ち明けられました。「養護学校を卒業すると全く行き場がないの」

 「それなら作業所を作ろう」と決断して仲間と相談。作業所を、ふれあいほうむどうぞ%烽ノ包括する方法を思いつき、バザーなどで資金をため2005年春に開所。初の通所生2人は配膳や弁当配達に生き生きと働きました。通所生が日常的に社会と触れ合える仕事に就いたのは、障害者理解のうえで意義があったと信じています。

 作業所開所5周年には地元で記念の「ふれあいまつり」を開き、1000人が来場しました。翌年、地元商店主さんら、まつり実行委員会メンバーによる「二条駅かいわいまちづくり実行委員会」が誕生。主催した「二条駅土曜マルシェ」や「ちびっこひろば」は、今や地域の恒例イベントに定着しています。

 社会で何かをやり遂げたいと決めたら、自分の方から手を差し出すことです。熱意をもって続けると、その手をつかんでくれる相手が必ず現れる。指導者より「始動者」を目ざしてきた私の体験に基づく信条です。

 手をつかんでくれる相手は06年、「ハイ・どうぞ」の開設時にも現れました。新たな拠点を探し、市の福祉ボランティアセンターに相談すると「二条駅近くに貸してもいい町家があるらしいよ」。なんと、そこは私が毎日通りがかりに見て「借りたいな」と願った場所だったのです。

 通所生の巣立ちもあって作業所運営とそれまでのボランティア活動は17年3月で終えました。今は毎土曜日の定例活動や近隣大学との地域連携事業に力を入れています。

 多くの理解者に支えられた感謝の20年でした。今後は仲間たちと思いを共有しながら、生涯現役を貫くため絵本や地域づくりの活動などを続けていくつもりです。


こばやし・けいこ 
1950年、京都市生まれ。大阪成蹊女子短大卒。京都市の小学校教員を退職して会員制ボランティア団体「ふれあいほうむどうぞ▲を開設。認定小規模作業所を運営する一方、「二条駅かいわいまちづくり実行委員会」の開設を主導した。12年、京都府も参画する「京の公共人材大賞」受賞。